30分ほどもがいたがまだ1300mにも達していない。
こいつはやべえとこにきちまったなと苦笑いのチェルシーさん。少しネマガリの背丈が低くなったが一瞬。そして傾斜がある。
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さらに20分ほどみっちりと太いネマガリが詰まった斜面を登っていくと熊の寝床かもしれないが少し空間があった。藪漕ぎしない人から奇異の目で見られそうな場所だが今の僕らにはオアシスだ。チェルシーさん余裕の一服。9:21。10分くらい休憩。
まったりしているがネマガリの太さと向きから状況は察して頂きたい。
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丁寧にネマガリをかき分けて掴んでよじ登る。その繰り返し。
ネマガリから顔が出るとようやく息ができますわと解放感。
チェルシーさんの姿勢でずっと進んでいる。拓けているように見えるがただたんに僕が踏んだから空間が出来ただけだ。
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9:44、1340mくらいで突如として高速道路が出現した。
振り向けば沼原や西ボッチもみえる。
喜び勇んで駆けあがる。
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はい残念、とばかりに現実の壁が立ちはだかった。5分にも満たない栄光だった。
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少し方向を北へ修正したいのだがネマガリに邪魔されて方向はなかなか変えられず。仕方なく北西へ進んでいく。
たまに薄くなったかと期待させたり獣道が横に走ったりもしたがすぐに密になり裏切られる。
写真を撮ってもネマガリしか写ってないので割愛するがもうただひたすらにネマガリ藪を漕ぎ続けて行く。
久々に空が見えた。いつの間にかいい天気で暑い。
なんだかんだで1400mを過ぎた10:35。
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1450mを過ぎたのだがやはり番屋のコル(1489m)から少し南西に外れたところで稜線に出そうだ。北東に移動したい、でも行ける気がしない。悔しい。
ネマガリは笹目に逆らって移動することが非常につらい。
まあでも大分楽になってきた気はした。
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11時前になり急に傾斜が緩く密度が下がった気がした。高度計とGPSを見るとやはり稜線近くまで来たようだ。番屋のコルへトラバース気味に行こうとしたが笹目に流されて変な方に下れされそう。二手に分かれて尾根センター方向へ移動しかつての反射板跡へと続いていたと言う踏み跡を探る。左に散開していたチェルシーさんが踏み跡を見つけたらしいのでそちらに駆け寄る。
あったよ!踏み跡が!ネマガリが覆いかぶさっているが足元がスカスカなだけで世界が違う。チェルシーさんが言うには1624m方向にも明瞭な踏み跡があったらしい。そちらに期待しつつ一度番屋のコルへと少し下っていく。
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11:02、ようやく県境稜線の空気を吸う。ネマガリの背丈が低くなったとチェルシーさんが喜ぶ。一応これでも踏み跡の上にいる。
番屋コル近辺はまたネマガリが深くなるので正直近づきたくはなかったが軌跡を繋げたいし二度とここに来たくないので泣く泣く下りて行く。
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振り向いて。チェルシーさんを探せ。
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少し笹藪が低いところから。
去年はガスガスで見ることの叶わなかった景色。
栃木側。
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福島側
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もうこれでいいですかね?確か去年到達した記憶のある木まで近づいて二年連続番屋のコル到着と言う事にした。21世紀になってから二年連続無雪期にここへやって来た馬鹿が僕以外にいれば友達になりたい。11:09。
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少し戻ってチェルシーさんのヘルメットが見える辺りの笹藪が薄いところでは藪から出て腰かけられたので大休止。昼食にしましょうと言うともうそんな時間ですかと驚かれる。藪の中で時間感覚も狂ったのだ。そしてお互いラバーソールだからと履き替えていなかった沢靴をここにきて登山靴へと履き替えた。
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11:53、歩きを再開。想定以上に時間を喰ったので果たしてどこまで行けることか。
とりあえず1624m地点を目指す。
二度と見ることはないであろう番屋のコルか周辺の景色を目に焼き付けた。
チェルシーさんも貴重な景色が見れてきた甲斐があったと言ってくれる。
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反射板跡へとつづいたらしい踏み跡、福島側からの踏み跡が1624mへと伸びているところに首尾よく合流し、ネマガリが覆いかぶさっているが利用していく。不明になる部分は適当にがさってまた踏み跡を探して。
大倉山の南尾根が見える。
お互いあのゲロ藪を通ったことがある身なので感慨深く眺める。
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踏み跡を利用しつつ歩いたせいか25分ほどで1530m近くまで来て烏ヶ森の住人さんの記録にもあるように藪が腰高になり獣道か踏み跡かよくわからないが拾えるように。
栃木側、刑部沢源流を詰めた先の一つ。ここ笹薄いなあ、ここに上がれば良かったかと思わないでもなかった。去年はガスガスで番屋のコル南の沢形が藪なのを確認できなかったから仕方ないのだが。
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この程度の藪なら捗る。
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反射板跡までは栃木側の灌木とネマガリのコンタクトラインで結構楽できそう。
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ヌタ場やにょろりとしたイキモノを見つつ進んでいく。右の藪がガサってドタドタと重い足音が去って行った。とんとーん!!と叫び笛を鳴らす。十中八九熊だった。
いやあ裏那須に熊が多いって本当ですね。泣きたくなった。
その後ガサリ→鹿が飛び出すことが2回くらいあったがやはり足音が最初のと違った。

茶臼岳が見えるようになり心が落ち着く。今日はいい天気だな。過去三年の藪開きで一番いい。
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藪が腰高になってからは順調に進んでいる。
振り返れば番屋のコルは見えなくなった。こんな明瞭に獣道がある区間も。
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あまり変わらない構図だが何度も撮影してしまう。
もうこの光景を見に来ることはないだろうから。そしてこの光景を見たことのある人間はほとんどいないだろうから。
この瞬間だけを切り取るならば爽快な稜線歩きと言う事になるだろう。
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福島側、音金集落の向こうの山々には疎い。
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12:40、1570mくらいで藪の薄いところがあり展望良かった。一息。
ヌタ場もあり。
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その先の斜面で踏み跡を見失い灌木オールスターズの襲撃を受ける・・・と思いきやベニサラサドウダンやシャクナゲさんが咲いておりちょっと癒し。ハクナゲさんの花は綺麗。でも藪。
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12:54、シャクナゲートを抜けるとポンと広い空間に飛び出た。ここが反射板跡らしいな。獣道はナゲ藪を栃木側から巻いてきたようだった。
チェルシーさんが錆びたボルトを見つけた。
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1624m地点を目指すべく再度藪入り。
灌木オールスターズの間の通路をネマガリが埋めている。大昔は刈り払われていたのかもしれない。まあ今はえぐい藪だけどな。
ベニサラサドウダンが綺麗ですね~などと癒されている場合ではない。
空はこんなに近いのに1624m地点が果てしなく遠く感じる。
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10分ほどガサゴソして1620mくらいに。結構遠くまできましたねと振り返る。
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1624m地点周辺はこれまた灌木オールスターズとネマガリの混合藪がみっちりと詰まっており難儀した。
これもうたぶん1624m地点についてるし下山した方が良くないか?とも考えた。
山は逃げないし。
でも今日と言う日は二度と来ない。今この瞬間を生きろとむうたさんも書かれていた気がする。白い雲の浮かぶ青い空を見ているとやっぱり行けるところまで行こうと言う気持ちになってくる。
赤柴山に行ったからと言って何かもらえるわけでもない。だけど無雪期に日帰りで藪漕いで赤柴山へ行く、それはとても痛快なことに思える。
僕は前へ進む事にした。
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続く