2019.4.28(日)
平仁手 -林道のようなもの -ナゲのいる廃屋? -作業道 -道のないトラバース -ナゲのいる完全な廃屋
-道のないトラバース -1072m地点北北東尾根 -市境尾根 -1215.7m三角点 -展望地
-1215.7m三角点 -適当な地味尾根 -ナゲのいる廃屋? -林道のようなもの -平仁手

ナニモノかに導かれて

既にして一月前なのでうろ覚えなのだがGW突入して最初の登山はアカヤシオを見に奥山方面に行こうと考えていた。
しかし毎年歩いている地域なので過去の焼き直しのような歩きをするのもなあと言う思いもあった。
迷ったものの他の場所に行くのも億劫になり平仁手方面からその日の気分で適当に歩くことにした。

4/28、何度寄ったか最早忘れるレベルで利用している何時のセブンによってからR122を走り小中駅から北へと進んで林道で平仁手へ。アカヤシオの季節だから誰かいるかなあと思いきや誰も駐車しておらず。
路肩のスペースに停めて歩きだす。8:04。
天気予報は晴れだったような気がしたがどんよりとした空。
とりあえず沢に下りて洗い流しで渡る。
2年前はそこですぐに尾根へと取りついたのだが今回は深い考えもなくなんとなく南にトラバースしてから適当な尾根に取りつこうかなと思った。
すると林道らしきものが南へ伸びているのに気付く。
沢沿いに歩くとすぐに巨大堰堤で下れなくなるのは自明の理。
これ幸いと林道らしきもので尾根の南側を回り込むように歩きだす。
林道が無くなったらどうしようかとか深くは考えていない。
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沢を渡ってから7分ほどぶらぶら歩いて行くと何やら見慣れたイキモノがいる。
本来であれば藪の番人、シャクナゲさんである。
現在標高は800m以下。ナゲ達が自生するはずのない標高なのだが?
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そういえば2年前もいるはずのない場所にはぐれナゲがいたな。
あれは確かここから尾根を上に上がった辺りか?
ここにいる奴らはどこからか連れてこられたナゲなのだろうがここから生息地を広げて行ったのだろうか。
良く見ると横の植林にもあちこちナゲが生えておりこちらの様子を窺っていた。
飼いナゲから野良ナゲへの回帰。
この辺りではそこらへんの庭で平気な顔して暮らしているだけありある程度麓の暑さにも対応できるようだ。中々たくましい奴らである。
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そして花のタイミングにはドンピシャだったようで。
どこか自慢げに花を咲かせているが野良の如き自由さは足りない。
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奥に進むと家屋があったのでこのナゲ達の飼い主が出てきたらとりあえず頭を下げてから通過しようと考える。
しかし家屋は廃屋というにはそこまでボロボロではなく人が暮らしているにしては古いし人気がない。
窓から中を除くとカレンダーは2017年。
比較的最近まで人が住んでいたのだろうか。たまに利用しているだけなのだろうか。
勝手に生息域を広げているナゲ達を除けば庭もあれていない感じがするしなんとも不思議だ。とりあえず迷い家ということにしておこう。
僕はそっと庭の端を通り抜けた。
地形図を見るとぽつりと家屋のマークがあるので現在地は把握した。

庭の隅にある小川を渡る橋は腐りきっていてこれだけ見るとやはり日常的に使われている家屋ではないなと思う。
奥の方にトラバースする作業道らしき細い踏み跡が続いているのだが、どうも飼い主の手から解き放たれたナゲ達がはみ出ている。そのうち塞がれるのかもしれない。
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そうかと思えば行儀よく並んでいたり。相変わらず気まぐれ。
ふとナゲ達の上を見ると電線が通っている。さっきの家屋に繋がっているのだろう。
住んでいた人はよほどナゲを気にいっていたと思える。
結構な数の飼いナゲが群れをなしていた。
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ナゲゾーンを抜けて歩いて行くと作業道の横に"水源かん養保安林 群馬県"と木の標識。
一応公式の作業道らしい。
さらに進み支尾根を一本南へ回り込むと開けた場所に出た。
急斜面に網で囲いこまれた場所が何箇所か。作業道は薄い踏み跡となり上に行ったり下に行ったり。
畑でもないし良く分からない場所だ。
ここで電線は沢へと下りて行った。
電線を通すためだけに切り開かれた場所なのかも知れない。何本か木が植えられてはいたが。
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良く分からない場所だしそろそろ支尾根で登ろうかなと考える。
しかし地形図を見るとこのまま南へトラバースして行くとまた別の建築物マークがぽつりとある。
どうにもナゲの気配がするな。地形図には書いてないけど。
アカヤシオを見に来たはずなのに何故かナゲに会い、全く関係ない歩きを20分ほど続けている。
このままナゲに導かれて行くのもまた面白いかもしれない。
作業道は続いていなかったが、僕は少し急な斜面を無理やりトラバースして行った。
踏み跡はあるようなないような。やっぱりなかった。
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10分ほどカサカサと無理やりなトラバースをしていると植林帯から自然林となり急斜面の下を見るのが怖くなってきた。
ふと下を見るとワイヤーのようなものが横に伸びているのでもしかして古い道でもあったか?と下りてみる。
近づいて見てみるとこれは道の横をガードしていたと言うよりは土砂崩れを防いでいたのでは?
帰りたくなった。
しかし少し危ういトラバースをすると一瞬植林となり狭い踏み跡があったのでそれを利用してトラバースを続けた。
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植林は一瞬で終わりすぐに広葉樹林となった。
今度は上を見上げてみると黄色い新し目の水源かん養保安林の標識が目に着いた。
おいここまで道なんかなかっただろ。どこからどうやってきたんだ標識取り付け人。
腑に落ちない心を抱えたまま急斜面を少し登った。標識の横に実は作業道があることを信じて。
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カサカサと標識まで這い上がって見たがその奥に道は繋がっていなかった。
ただの斜面だ。あまり捕まる木々もなく相変わらず嫌な感じである。
しかしここまできたら先に進むしかないし植林まで逃げ込めばなんとかなる感があるのでトラバースして奥へ進んだ。
奥へと進んでみるとそのうちなんとなく踏み跡のようなものがあり沢へと緩く降りて行くことができた。8:46。写真で見ても踏み跡?と言った感じではあるのだが。
なんでこんな怪しげな動きを繰り返してまでトラバースする気になったのかは今となっては僕にもわからない。
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GPSを見てみるとどうも目指していた建築物より標高30mくらい上の沢にいるようだ。
良く見てみると木にペンキのマークがあった。沢沿いの木につけてあるだけで道標識ではないようだが。
一方で沢沿いにこれは流石に作業道だろうと言う踏み跡を見つけた。これにそって下ることにする。
奥の方にナゲが見えた気がした。
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2分ほど進むと切り開かれた、ただし荒れている斜面に出た。
下の方に見慣れたイキモノの姿が?
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この辺りの廃屋にアズナゲあり。
やはり現れたのはシャクナゲさんである。
こちらの廃屋の奴は二、三株集まっており行儀が良い。
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と、思ったらやはりそんなことはなく。
少し下りて行くと斜面一帯びっしりとシャクナゲ軍団に制覇されていた。
こちらはもう人が住まなくなって何十年とたっているだろう完全な廃屋なので、人が去ったのをいいことに好き勝手勢力範囲を広げているらしい。
さっきの廃屋?もそうだったが庭の真ん中に沢が流れているのはいい雰囲気だなあ。
この沢溢れる湿気がナゲ達の生息環境を整えているのかもしれない。
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しばしナゲ達と戯れてからさっき沢に降り立った地点へと登り返す。
一応トラバースの目的は果たしたのでもう支尾根で登ってもいいのだがどうせなら1072m地点北北東尾根までトラバースしてそこを登りたかった。
歩きだして一時間少々、ナゲ達のおかげで大分濃密な時間を過ごしてはいるのだが肝心のアカヤシオは見ていない。それでも今日の気分はアカヤシオよりもう少し冒険かなという感じで。
道もない植林帯のトラバースを開始した。9:14。標高780mくらい。
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植林帯ははっきりとした道がなくてもなとんなくトラバースできる。そんな根拠のない自信を元に適当にトラバースし、岩場を巻いて歩いて行くと10分ほどで沢へと下りて行く踏み跡が現れた。
幅広い支尾根を一つ越えて目的の支尾根手前の沢まで辿りつけたことになる。
登山道とかで出会った人に一人で道のない所歩くの怖くないですかとよく驚かれるのだが、こういう道もなく尾根でもなくあてもない頭の悪い歩きは一人じゃないととてもできない。だから僕は一人歩きが嫌いじゃない。
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源流と言うには趣のない植林の間を流れる沢を少し歩いて尾根への取りつき地点を探る。
やたらと急ではあるが地形図的に勝算ありと見た小尾根をよじ登っていく。
岩場に突き当たったので少しトラバースして。
実のところびびりながらの登りだったが次第に傾斜が緩くなりほっとした。
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小尾根に取りついてから10分少々。
植林の急斜面を抜けて880mくらいで1072m地点北北東尾根に合流した。9:43。
陽射しも出てきたし落葉樹が多く明るい雰囲気の地味尾根だ。気分も良くなる。
歩いて行くと林業やハンターの形跡がいくつか見つかった。割れた一升瓶のかけらとか。
古い境界見出し標みたいなのもあったが何の境界だったのだろう。
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大した傾斜もなく歩きやすい尾根だったのでぶらぶらと気分良く歩いて行く。
大分歩いてからそういえば今日の目的はアカヤシオだったとようやく思い出すほどにアカヤシオは皆無であったが。
10:15、1072m地点北北東尾根に合流してから約30分であっさりと市境尾根についた。1072m地点の少し北西。ここから先は歩いたことがあるので後のお楽しみはアカヤシオが咲いているかどうかだけ。
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確かこの先の細尾根の少し岩っぽいところにアカヤシオ居るんだよなと少し期待して歩いて行く。

アカヤシオは衰退しました。
蕾が多いからまだ早かった、なんてことは先週近くを歩いた時の様子からあるわけはなく。
地面に痛んだ花弁が落ちている。何か知らないがこの辺りのアカヤシオ痛んで散ってしまったらしい。蕾は成長する前に停められた感じか。
この時は原因を知らなかったが、翌日の歩きや他の人の記録を見るに前日夜半に霜が降りたのと強風でこの辺りはほとんどやられてしまったようだ。
結果的にはナゲ達の写真を撮影しておいて救われたと言う事になる。
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なんだかなあと思いつつ1119m地点の一つ南のピークへと歩いて行くと人の声がする。
人がいるなら間違いなく僕とは逆に西から来ている。アカヤシオ情報が得られるかもしれないと急いで岩場を越えて辿りつく。
すると年配の夫婦がいた。10:28。

二人はやはり西から。去年の僕と逆ルートで歩いてきていた。
アカヤシオが良いときいたので初めてきてみたが、途中で一か所いいとこがあっただけで後はだめだったとか。やっぱり標高上の方は霜でやられたようで。
僕が妙なところから一人で現れたので着たルートとかを話しているうちに話が弾んで20分以上過ぎていた。まあアカヤシオが期待できない今時間はどうでもいい感じだが。
10:51、そろそろ流石に先へ行ってご飯を食べて帰ろうと思い北へ進む。
痛みきった花が物悲しい。
夫婦も歩きだしは一緒だったが僕の方が大分歩くペースが速いのですぐに離れてしまった。
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11:23、1215.7m三角点。
周辺のアカヤシオは蕾。いや咲いていた奴もいたのだろうが奴らは死んだ。
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このまま帰っても良かったのだが一応展望見て帰ろうと南西の展望地へと歩いて行く。
11:34、展望地。アカヤシオは蕾。
尾瀬の山は白いのに対して赤城山は雪はほとんどない。まあ四月末だしこんなものだろう。
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例年なら薄紅色の者達が彩る斜面が寂しい物で。
これを見て僕はこれ以上寄り道せずに帰ることにした。
ただし昼飯はここで食べる。
のんびり30分休憩した後、痛んだ蕾を眺めてから帰った。
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1215.7m三角点へと戻り東へ進むとさっきの夫婦がこちらへと歩いてきた。
アカヤシオが衰退したので帰ります、向こうに展望地ありますよと教えると飴をもらえた。
1020m地点を通る尾根は一昨年歩いたのでその一本南の尾根で下る。下って最後北東に行けばナゲの迷いがにたどりつくのも計算づくで。
山とかかれた標石や水源かん養保安林の標識も見たのでそれなりに人の入っている尾根だ。藪もなく歩きやすい。
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衰退したアカヤシオを達も結構見かけた。見るも無残なのでろくに写真も取らなかったが。
1000mを切ると一応花弁の付いたやつらもいたがこれはこれで旬を過ぎていて。ままならないものである。
12:42、950mまで下りてくると切り開かれた箇所があり南東の展望が良い。
アカヤシオ亡きあとの唯一の見どころか。
まあ気分の良いところではあった。
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そこから北東支尾根へ下りて行く。
この日一番まし、でもしょぼかったアカヤシオと逆に咲きかけのみー猫さんが好きな奴。
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900mの分岐、ここを東に下りれば良かったのだが面倒だったので距離の短い北へと進む。
すると最後急斜面を滑り落ちないように慎重に下る羽目になった。このルートは良くない。
ここまでの尾根は非常に歩きやすかったのだが。
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なんとか下り切った後は迷い家に寄りナゲ達に挨拶。
林道わきにこっそり佇んでいる奴らは庭からのはみ出し者なのだろうが、10年後くらいは一面ナゲ藪になっているのかもしれない。
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13:19、駐車地着。
アカヤシオを見に来たはずなのに何故かナゲ達と親交を深める良く分からない一日だった。

今回の軌跡
この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用した。(承認番号 平24情使、第26号)
無題
そんなわけで今年の奥山は外れに終わった。
盛りの時期が分かっていても四月末に霜と強風でやられることまでは想定できず。また来年かなあとも思うがまた歩いてない支尾根を歩いてしまったし来年は別の場所に行こうかと思う。
思いがけずナゲ達に一杯喰わされた一日だったが、半野良化しているとはいえあいつらは庭ナゲ。やはり野生のナゲ達の花を今年も見たい所。
あれから一月経ち、そろそろ袈裟丸方面のナゲ達も、と思うのだがどうなのだろうか。