2019.11.17(日) 同行者:きたっちさん
安ヶ森キャンプ場 -林道 -ヌーグラ沢中間尾根取りつき -1019m地点 -石楠花領域 -栃木・福島県境
-1304m地点 -1398.8m三角点 -1294m地点 -安ヶ森峠 -安ヶ森林道 -ユナゴ沢・七曲沢中間尾根 -林道駐車地

紅葉シーズンおざなりにされてきたナゲ達が今牙を剥く。


週半ば、きたっちさんから安ヶ森山・安ヶ森峠辺りに行きませんかと打診があった。
この週末は特に予定もなく奥秩父の適当な地味尾根に行こうかと考えていた程度で。一人で行く気にならない栃木福島県境尾根歩きである。やる気のある人間から誘いがあればのらない手はない。
去年の時点では安ヶ森林道がユナゴ沢を横切る辺りまで林道が復旧されているようだったので、当初はそこを起点に安ヶ森山へはピストンしたくないしあーだこーだと計画を練っていた。
しかしながら林道偵察に出かけたきたっちさんによると先日の大雨や台風でまた林道がやられたらしく、車が入れるのは七曲沢過ぎて200m程度までらしい。林道歩き2km追加だ。天気予報から日曜歩きが良さそうだが、きたっちさんは夜に予定があるらしく三時には下山したいとのこと。計画を考え直した。

とりあえず安ヶ森山へは林道が復旧するであろう来年以降に行くとして今回は安ヶ森峠までとしたい。
そうなればヌーグラ沢右岸のどこかから県境に上がり縦走と言うのが常道だろう。
しかしながらこの辺り、安ヶ森峠-安ヶ森山間は比較的記録が良く見られるものの、反対の西側はナゲかわしいことに無雪期の記録がほとんどない。県境ならとりま烏ヶ森の住人さんの記録をと言うところだが、1549m地点からヌーグラ沢左岸尾根が県境に合流する地点までの県境尾根は歩かれていないようだ。この辺りshige-ponさんがよく歩かれているのだが1398.8m地点から安ヶ森峠間は無雪期に歩かれており参考になる。しかし一番参考になるのはなんのことはない、きりんこさんの記録だった。ヌーグラ沢右岸尾根から県境に出て安ヶ森峠まで歩かれていた。県境尾根の記録はそのまま参考になる。
とはいえそのままヌーグラ沢右岸尾根で取りつくのはあまりにも芸がないでしょう、というわけで一つ北の支尾根、1019m地点を通るヌーグラ沢中間尾根(仮称)を利用することにした。ここはshige-pinさんが残雪期に歩かれており(shige-ponさんはこちらをヌーグラ沢右岸尾根と称されている)、1019m地点から先では残雪から顔を出すナゲ達の様子がうかがえる。
最近、あんまり構ってやれてないしな。今年のナゲ納めしとくか。
無雪期の記録は見当たらないので、というときたっちさんからOKが出たのでヌーグラ沢中間尾根から県境へ出ることになった。


11/17、2時半過ぎに家を出ていつものガソリンスタンドに行くとまさかの電気工事で閉店中だった。幸先が悪い。
しかたなく新4号を走り適当なガソリンスタンドに入る。セルフでなかったのでしまったと思ったがその後見かけたガソリンスタンドより安かった。逆に不安になる。
日光有料道路手前のローソンで立ち読みしていたらうっかり4時前になったので慌てて店を出て、1時間ほどかけて集合場所の湯西川水の郷へやってきた。集合は5時半なので余裕はあるが屋外にトイレはなかった。困ったなとグーグルマップで調べると2km程西のポケットパークにトイレがあるらしい。時間もあるので行ってみると屋外の公衆トイレなのに暖房が入っていた。でも電灯のスイッチは見つからなかった。

水の郷へ戻り仮眠しているときたっちさん登場。一先ず安ヶ森キャンプ場の駐車場へ行くが小雨が降る天気でモチベは下がる。
だがまあ早起きしてここまできて帰る選択肢もないのでとりあえず安ヶ森林道の通行止め地点まできたっちさんの車をデポしにいった。1km少々だが楽はできる。
まだ薄暗い中準備をする。寒いし暗いし雨降るしなのでダウンと合羽を着こむ。
ザックカバーまでつけたのはいつ以来だろうか。本当は今日はピーカンのはずだったのに前日になって天気予報が裏切った。本当に今年は使えない天気予報だ。天気が当たるかどうかをボーナス査定に反映させればやる気を出すのではないだろうか。
ともあれ6:02、林道奥へと歩きだす。薄暗くてピントが合わなかった。
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林道沿いの紅葉が綺麗だったりしたのだが薄暗くてまともな写真は撮れず。
少しがっかりしつつ歩いて行く。特に深く考えずここは右ですねとすすんだところが白滝沢沿いの林道との分岐点だった。
林道が崩壊しているような個所もなく、20分ほど歩いてヌーグラ沢中間尾根の取りつきに着いた。
橋を渡った先の黄色い標識奥に取りつく。6:24。
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きたっちさんがスパッツをつけるだかなんだかで一旦ザックをおろしたのでその間に少し先行して探って見ると薄い踏み跡が尾根末端から続いていた。
少し登ると明瞭な踏み跡は中腹のトラバース道となり奥へと続いて行く。ただそちらへ行くと尾根の上へ進めないので薄い踏み跡で尾根上に出た。
踏み跡はあるのだが長い間使われていないのか少々藪い。そしてちょっと急。少し歩いてダウンは脱いだ。
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相変わらず小雨が降り続き周辺はガスガスとコンディションか悪いのだが、きたっちさんが向こうは青空だと言う。
確かに南東の方は晴れ間が見えた。しかしながら風は北西から吹いており、そちらには厚い雲。僕らは青空の下歩けないようだ。
おまけにカラマツっぽいが植林歩きで嫌だなあと思っているとぽつぽつと楓が生えていて。これはこれはと撮影しつつ登って行った。
晴れてたらわりと雰囲気良かったかもしれない。おかげで急傾斜でも気を紛らわせることが出来た。
林道沿いでも紅葉が良く色づいていたので、この辺りの植林の隙間産業な紅葉でも楽しんでおかないとこの先見るものはないのだ。
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そんなわけで紅葉で気を紛らわせている間に急な登りはほぼ終わった。
1019m地点までの登りはまだあるが傾斜が多少緩む。
そう思っていた980m辺りでなにやら見慣れたイキモノが現れた。
茶色や赤黄で占められた空間に突如現れた緑の偵察隊、シャクナゲリラである。
立ち塞がることはなく一小隊がすっと現れて消えて行った。
きたっちさんも偵察ですかねと言う。ちなみにアズナゲだ。
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ナゲ達を置き去りに先に進む少し平坦で藪もない空間があり、ちょっと一休みしたくなる。
まあまだそんなに歩いていないしと一登りすれば1010m辺りからにょろりとナゲ達が這い出てきた。
わしゃわしゃと大量に現れて、やはりさっきのやつは偵察隊だったかと思う。
しかしこの辺りは昔、人の手が入っていたらしくナゲの細道が出来ていて労なく進む。1019m地点あたりで6:58。特に何もなかろうと通過。
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しかし鞍部へと向かうとナゲの細道は消え去り我が物顔でナゲ達は尾根に繁茂している。
仕方なく横から少し避けて下りたり掻き分けたり。まあまだこの時点ではそんなに濃くなかった。道はないがなんとなくナゲ藪の真ん中が薄くなっていたり。
対岸はガスガスだとか、綺麗な紅葉のツツジだとか見る余裕もあった。
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鞍部へ下りるとナゲ達はそそくさと立ち去って行く。
藪もなく切り通しではときたっちさんは言うが左右の谷間は深くここに道はなかったであろう。
登り返しは藪もなく快適そうだ。
周りを見ればやはりこの辺りはカラマツが目立つ。
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登り返して3分後、ナゲ達が仲間を引き連れてやってきた。
シャクナゲートを形成し尾根を塞いでいるがやはり詰めが甘い。左から軽く巻いて突破。
その後も断続的に現れるのだが大して数もなく背も低い。軽く横を素通りするかなんとなく存在するナゲの細道で進んで行った。しっとりと濡れているのが嫌らしい。
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そろそろ休憩しませんかとのきたっちさんの提案に乗り、雨で乗れていない場所を探して7:18、1070mくらいで乾いた木の根もとに腰をおろして休憩。
動くのをやめると寒い。合羽を着ているので服は濡れないのだが風も吹いているので日が差さないとつらいものがある。まあ今日はダウンにフリースも持ってきているので着こめばいいのだがどうせ歩きだせば暑くなるのだ。
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15分ほど休んで先へ進む。
性懲りもなくナゲ達が仲間を呼んできた。獣道らしきものを辿り左から回避して尾根に戻る。
なんだか数も増えたしイキがよくなってきた気がするな。
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とはいえなんとなく踏み跡もありナゲ藪漕ぎという感じもまだなく。回避して戻った尾根上のナゲ達も大人しく。
1090mを過ぎて少し平坦になるとナゲはささっと消えた。
木に古いワイヤーが巻き付けられており、昔はここまで手が入っていたようだ。
ナゲ達も鉄に怯えて逃げたのかもしれない。
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しかしすぐさまナゲ達は帰ってきた。
最初はまだ人工物の余韻を残してか尾根上に細道を残していたものの、
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1分後にはこれである。
この先は人の手が入らない場所だったのか、それとも相当昔だったのか。
ともあれ我が物顔で君臨するナゲ達の姿があった。この時1110m手前だったのだが、この先かなり緩く標高を上げて行く。地形図を見る限り細尾根が続く。これは僕の勘だが、どうもこの環境ナゲ達の生育には非常に適しているように思える。奥日光の中山の奥に存在する細尾根も確かこんな感じだった。どうやら思ったよりもこの支尾根、骨が折れそうだ。
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鞍部へと下りた一瞬だけベビナゲが散開程度する程度に収まりほっとするがすぐに藪が濃くなる。
厄介なことにイヌツゲまで現れた。
しかし古い切り株もあり稀に藪も薄くなるから大昔は人の手が入っていたんだろうな。
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ナゲ達も一枚岩ではないのかたまに薄くなるので一息つきつつ進む。
ぽつりと空間があったので人工的なものかと思ったら岩だった。
ガスガスだが県境尾根はすぐそこ。とはいえここまでナゲ達がハッスルしているとわりと時間がかかりそうだ。外れ尾根引きましたかねえというといや当たりですよときたっちさん。藪好きにはたまらないでしょうと、やはり無雪期栃木福島県境尾根に誘ってくる人間は思考が違う。
まあ急斜面じゃないからいいかと歩いて行く。細尾根なのでサイドに回避不可。ナゲ藪メインで脛を炒めつつ歩くのは久々だなあと思いつつ進んで行った。
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1130mを過ぎて行くと少し尾根が広がりそうなるとナゲ達の集中力も散漫になる。ナゲ達とて数に限りがあるのだ。隙間を通り、尾根上に集中している所では裏をかいてトラバース気味に突破。
ただそこまで尾根が広くないので傾斜が急になると尾根に戻る。
ナゲ達と同じく伐採を免れたのかやたらとでかい大木や反対にあえなく切られた切り株も見たり。切り株も自然に還っており苔むしている。
成長の遅いナゲ達だからして尾根上にこれだけ繁茂していることから見て平成の時代にはもうこの辺り人の手を離れていたのかもしれない。
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きたっちさんもナゲ達と対話を試みている?
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北の方になんだか崩れて危うげな壁面が見える。
あんなの地形図にありましたっけなどと話していたがよくみたら1272m地点を経由する支尾根はあちこち崖マークがあり地形図でもやばさが分かるところだった。
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相変わらず繁茂しているナゲ達だが、やはり集中力が続かないのか尾根が広がれば散開して隙を見せる。
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おかげでなんとなく前に進み続けられるのは、流石に裏那須の凶悪な灌木オールスターズとは違うところか。1180もから少し急なところをナゲの間隙を突いて登れば、1200mからは右側に獣道あり。
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こいつは捗るぜと思ったのも束の間。1215mくらいで枝尾根の角を回り込んだら急斜面だった。
おまけにこういう時に限ってトラバース時に捉まりたいナゲが生えていない。いつだって肝心な時に役に立たないのがこいつらなのだ。
グスグズで超細い獣道?を進む気にならず躊躇する僕。それを尻目にきたっちさんは先へ進んだ。一本先の木まで行けば安全なのだがそれが怖い。写真ではわからないが急斜面の下は谷底だ。
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ここは賭けに出る場面じゃないなと僕は一段上がりナゲ藪とのコンタクトラインをナゲを掴みつつトラバース。
するとナゲ藪に隙間が見えたので尾根に上がり進んでいく。だがこれが罠。
すぐに屈強なシャクナゲートに絡め取られた。
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まあ本当に大した距離ではなかったのだがこの日一番の密藪。アズナゲとイヌツゲのコンビネーションに絡まって面倒だった。ここだけ半空中戦。奥の切り株まで行くと藪が薄くなった。
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左奥には県境尾根。1549mピーク辺りが見えていたのだろうか。
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いやあナゲ達に一杯喰わされましたよと、トラバースでナゲゾーンを回避したきたっちさんに合流したのが1230m小ピークを巻いた先。
するとナゲ達は急激に大人しくなり、ナゲの細道も現れた。
ちょっと疲れたなと思いつつもすいすいと歩いて行く。
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1240mから始まる急斜面になればナゲ達はすっかり姿を消して。8:51。
2時間足らずであったがここまでずっとナゲ藪メインだったのは久々だなあ。今年もきつい藪漕ぎはしたがネマガリとかの方が主役だったような。この尾根はナゲ達の持続力が違った。間違いなく今年のナゲ藪オブザイヤーにノミネートだろう。
急だが笹も薄くなんてことのない尾根で県境へと詰めて行く。
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時間もあるし当初の予定通りヌーグラ沢右岸尾根が県境に突きあたるところまでピストンしておきたい。そうなると尾根を最後まで登るよりも左にトラバースして県境に出た方が標高差ちょっと得する。
そんなわけで最後は少し左にトラバースして県境に出た。1275mくらい。8:56。
PB170167
小雨は結構前にやんでいたのだが、県境尾根に出る少し前からあられが降るようになっていた。
ついでに県境尾根は遮るものもなく風が相当強い。ゴウゴウと音を立てている。
吹き飛ばされる恐怖は全くないが日が遮られているしかなり寒い。
こんなことならバラクラバと冬用の手袋も必要だったかなあと思う。服は重ね着セットはあるものの末端がお留守だった。まあ歩いているうちは耐えられるが。
とりあえず次回の尾根繋ぎを考えてヌーグラ沢右岸尾根合流地点まで行きますか。ナゲ達が見当たらない腰高の笹藪を掻き分けて、僕達は県境尾根を南西へ進んだ。
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続く