2020.8.29(土) 同行者:きりんこさん、きたっちさん
野門の路肩 -野門沢渡渉 -深沢出合い -深沢沿いの踏み跡 -上タケ沢・下タケ沢出合い -上タケ沢・下タケ沢中間尾根末端付近取りつき  -ナゲと交友を深める -暑さでぐったり -救済の水場発見  -ナゲったりナゲらなかったり-三界岳(2173.1m三角点) -噂の岩場(2200m辺り) -登山道合流 -女峰山 -帝釈山 -富士見峠 -沢沿いに登山道ショートカット -藪に返りつつある登山道 -道を見失う -日没 -登山道復帰 -林道終点 -ゲート前

敵はナゲではなく暑さ。


きたっちさんと出かける予定の歩きがいくつかあるのだが、そのうちの一つが野門からの三界岳だった。
前からいつか歩こうかなあと思いつつ中々面倒なのでスルーし続けてきた場所であるが、雨降沢にいった際きたっちさんも狙っていることを知りそれならご一緒にとなった。いつ行くかというのは未定であったのがロングコースなので日が短くなる前にと8月末に決行予定となる。きりんこさんも同行されるらしい。ついていけるか心配なので最近はさぼらずロングコースを歩いていたわけだが果たして。

さて三界岳というのは地形図に山名は記載されていない。女峰山の北北東、2325mくらいから北北西への支尾根に入り進んでいくとたどり着く2173.1m三角点峰のことである。当然マイナーであり一部のもの好きぐらいしか行かない場所だ。
この山一応女峰の登山道からは近いくせして実のところ中々難易度が高い。まず第一にどこから登り始めても遠い。一番お手軽だと思われる霧降高原からのピストンでさえ余裕の10時間越え。烏ヶ森の住人さんでさえ三回目の挑戦でようやく日帰り成功されているし、みー猫さんをしても11時間越えである。これには理由があり、2200m辺りにある岩場が大分やばいところらしく、ロープを正しく使う技術がないと越えられないらしいのだ。そこを安全に行くためにはナゲ達と触れ合いながら大きく巻く必要があり時間がかかる。核心部はここだろう。
さてここで問題なのは同行する面子がきたっちさんときりんこさんということである。岩場が嫌いな僕としては巻きへと逃げたいところであるが、このお二人はたぶん正面突破するつもりなんじゃないかなあと予想できる。弱気な僕は現地判断で分離して逃げていいですかと事前に逃げてみたが現地判断でやばかったら巻きましょうとの回答。
なら安心かな、とは思わない。この岩場手前まで行ったら巻くには結構戻らないといけないのだ。ここは正面突破する方向で事前によく検討することにした。とりあえず岩場をまっすぐ上り下りというのはボロボロで無理らしい。西側から巻くパターンが一番多いようだが数段降りるとトラバースできるようだ。ただまあ写真で見る限り崖になっていて相当怖い。これは避けたい。一方東側からとなるがこちらはYoshiさんとヤマレコの人が通過した記録がある。どちらも詳細な突破方法は書かれていないのだが西側よりは高度感がなさそうだ。僕はこれに賭けることにした。
なおまっすぐ上り下りできない岩場がどんなものかと先に図示するとこんな奴だ(きりんこさん撮影)。
三界岳いわば
さて核心部の方針を自分の中で決めたところでではルートはというと北側の野門から尾根伝いでということになる。まあピストンでいくのはつまらないし、二回目行く気にはならないだろうから北側から行くのは当然である。
北側から行くにもいくつかルートがあって野門沢源流からいかれたのがYoshiさんの記録。常に水不足にあえいでいる僕としてはこのルートも捨てがたいのだが尾根伝いに行きたいのでこれはエスケープルートとして参考にさせていただく。
では尾根ルートはというといずれも中々長い三本のルートがある。一本目が深沢出会いから取りつく1386m地点経由の一番長い尾根。これはヤマレコに二つ記録がみられる。取りつきは違うが@宇都宮さんもこの尾根で登られているようだ。
二本目が野門沢の支沢左岸尾根、1320m地点を経由する尾根で登るルートだ。これは1939m地点辺りで一本目の尾根と合流し三界岳へ至る。これは雪田爺さんが歩かれている。
三本目のルートは上タケ沢・下タケ沢中間尾根。これは先の二本の尾根とはほぼ独立しており三界岳でようやく先の二本の尾根と合流する。この尾根が一番詳細が不明なのだが滝見ついでに雪田爺さんが歩かれており、8割くらいは踏破されている。しかし三界岳は既に歩かれていることと遠目にナゲ達が集っているのを見て山頂まではいかれなかったようだ。これより日帰りで末端から三界岳に登られた記録がネットで見つからないのは上タケ沢・下タケ沢中間尾根のみとなる。そんな事情からかきりんこさんは上タケ沢・下タケ沢中間尾根で行きたいとのこと。特に反対はなかった。

8/29、四時に野門橋手前に集合であったが寝付けないので一時過ぎに家を出て、三時半に集合場所へ。仮眠しようとしていたら一台やってきた。見なかったことにして目をつむる。しかししばらくしてもう一台やってくるので起き上がり車を出る。
きたっちさんとはもうお馴染みだがきりんこさんとは実は初対面。とはいえブログではお馴染みだし何度もニアミスしているので他人という感じはしない。とりあえず聞いたのは直前にもらった10数年前に野門から三界岳に登ったというきりんこさんの上司の記録について。このきりんこさんの上司、大分妙なところを歩かれるので前から気になっていたのだが今回記録を見せてもらって正体は予想がついた。確認してみたらやっぱりねという感じで。

とりあえずきりんこさんの指示で野門の集落へと移動。
集落外れの駐車スペースに停める。ゲートは2kmほどさきらしいのだがそこは工事の邪魔になるから停められないそうだ。今回はゲート前にきりんこさんがチャリデポして、ゲートまで下山したらチャリで車回収し迎えに来てくれるという。ありがたい。
そんなわけできりんこさんがチャリデポしにいった後、きりんこさんときたっちさんの車は広い駐車スペースにデポ。僕のレガシィで下っていき、野門橋近くの路肩に駐車。ここから歩きだしとのこと。上タケ沢・下タケ沢出合いまでは経験者のきりんこさんに大人しくついていくことになる。暗闇なので未経験者は適当に進めないのだ。

準備をして歩き出す。4:19。
駐車した路肩手前の作業道を少し下り、そこから植林の斜面をトラバース気味に下りていく。ヘッデンで照らしてはいるものの真っ暗闇。しかしきりんこさんは早い。そして日の出前なのに蒸し暑い。
4:26、鬼怒川との出合いまでは下らず野門沢を渡渉する。靴を脱がずに渡れた。
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鬼怒川の右岸を歩いていくと4:32、深沢出合い到着。ここから深沢左岸の急傾斜を踏み跡辿り歩いていく。よく見ると道があるしテープもあったりするのだが初見暗闇でこれをたどるのは無理だなと思う。きりんこさんの後をついていくが暑いしきりんこさんは膝痛めていても健脚なので僕は必死。すでにして滝汗で心拍数もやばい。このあたりからすでに雲行きが怪しかった。きたっちさんも暑くて汗が出ると言われていたが僕よりは大分ましだっただろう。この日の僕の発汗は尋常ではなかった。
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急斜面を登りきると下り気味のトラバース道となる。きりんこさんから離れないよう必死。
しばらく左岸のままだったが一旦深沢へ通りて渡渉。ようやく明るくなってきたが写真はピンボケ。
少し進むとすぐに今度は左岸に渡渉して戻る。ガレを登って深沢をみおろすとこんなところに堰堤。
そのまま左岸を高巻いていき、5:22、上タケ沢の955mくらいに着地。沢沿いは涼しくていい。しかしすでに汗で服はぐっしょり濡れているし心拍数は相変わらず高いままだ。この暑さで最初からペースがいつもより早い、暗闇の緊張感とうでどうも調子がくるっているように思える。
この先予定通り尾根で行くかしばらく沢沿いに行くかと聞かれるが予定通り尾根で行くことに。しかしこの日の暑さを考えたら沢沿いで行った方がよかったと思われる。
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そのまま上タケ沢を少しだけ下り踏み跡で中間尾根を乗り越えて下タケ沢950m辺りへ。5:27。
ここで休憩しましょうという。既にして僕はぐったり。この先大丈夫かなという感じである。
しかし下タケ沢の冷たい沢水に手を浸しクールダウンしたら大分落ち着いた。滝を眺める。
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しかし心拍数は落ち着いたが問題は大量発汗だ。既にかなりの水が体から失っている。今日は4.5Lもってきたが補うためにもう1L飲んでしまった。この先尾根に水場はない。順調に歩けたとして次の水場は登山道合流後に一里ヶ曽根先の水場まで下らないとない。
今から何時間先かわからないし登山道出てからも女峰山とは逆方向に往復一時間くらいだ。
その水場によることは最初から既定路線なのだが、この暑さでそこまで大丈夫か?
僕だけ三界岳いった後は野門沢方面にエスケープしようかなとも思えてくる。そっちの方が早く水が得られるようでもある。
とりあえず3.5Lでは三界岳にたどり着けそうもないので後でろ過することにして1L下タケ沢の水を汲んだ。

5:41、いよいよ上タケ沢・下タケ沢中間尾根に取りつく。回復したので僕がトップ。
涼しい沢から離れがたく滝をまた撮影する。
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なんとなく続く獣道で一段上がり、岩場の横をトラバースしていくと谷まで早速いつものイキモノが現れた。いわずと知れた藪の番人、シャクナゲさんである。ずいぶん早い登場だが、野門側から三界岳へいく尾根はどこもこいつらの住処らしい。僕がよくいく女峰南面の田母沢中間尾根ルートではさっぱりみないのだが北側ではすっかり我が物顔。
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とりあえずこの時点ではただのオブジェ。横の細尾根に上がり少し進むとまた繁茂していたがそこまで邪魔ではない。
1010mまで登ると尾根が広がる。5:50。
右手の尾根形は無駄にアップダウンあるようだしナゲが手ぐすね引いて待ち構えているのでスルー。
そのまま藪のない箇所を歩いていき、左の緩い尾根形に取りつく。
しかしいざ登ってみると意外に傾斜が出てきて。
地形とナゲ達のせいで風が吹き抜けず暑い。汗が再び吹き出し心拍数がやばい。
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尾根が狭まるとすかさずナゲ達が繁茂するが現時点ではまだ隙間があってかわいいもの。
お前ら出遅れすぎだろうという感じだが何故かまだ花が残っていた。
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その先しばらくは藪もなく歩きやすい細尾根をぶらぶらといけたのだが、1110m辺りからナゲ達がしゃくぅと鎌首をもたげていた。
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きたっちさんときりんこさんは少し右からトラバース気味によけたのだが、ナゲから逃げるのはしゃくだったので僕はまっすぐ行った。無駄に交友を深めている。ただでさえ体力が削れ気味なのにこういう無駄なことをするから良くない。
さほど密ではないが微妙に足を引っ張る背の低いナゲ藪を歩いていくと、やがて大岩と倒木が点在する
ナゲ樹海に入った。ここもまたナゲ密度はさほど高くないのだが地形効果を得たナゲ達が絶妙に邪魔で腕と足が地味に疲れるのである。相変わらず暑いし僕の体力はじわじわと削られていった。当然最後尾になる。
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6:31、1200mまでくるとナゲ樹海を一旦抜ける。急登が始まる前にいったん休憩。
やっぱり発汗がやばい。ここまで服が汗で濡れるのは早々ない。塩飴だけでミネラルが足りているのかも不安だ。
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振り向けばナゲ樹海が手招きしているのだがそちらは水もなく暑いだけなんだよなあ。
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6:35、一息ついたので先へ。
ナゲ達は点在しているがただのオブジェ。岩場がありきりんこさんが右手から行くが面倒なので僕はそのまま尾根上を行き、きたっちさんも続く。ここは見た目と違い特に問題なく直進できた。
しかし次第に地形図通り傾斜がきつくなってきて緊張する。足にも来る。
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1240mくらいで一瞬シャクナゲトンネルをくぐり進んでいくと、6:53、1280m辺りで急な岩崖に出会う。ここは急であるがルンゼを登っていくしかない。落石注意で間隔をあけて登った。
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ルンゼを上がり、左にトラバースしていく。獣道があるようにも思えるが狭くて要注意。ナゲを掴んで確保。
さらにトラバース気味に尾根の東側をさらに登っていく。僕はきりんこさんの後をついていったのだがきたっちさんは早めに尾根上に登っていたような。そちらはナゲ藪。
最後はなんとも微妙な斜面を登ることになりもう少し早く尾根に戻った方がよかったかなと思った。
尾根上に戻るころには1330mを超えていた。
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尾根上は相変わらずナゲ達が支配しておりやむなくくんずほぐれつする場合もあるのだが、やばいところをポンと抜けると獣道で楽できたり、左側にトラバース道があったりする。
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しかし傾斜の緩かった1360mから1380m区間を過ぎると本格的にどうしようもないナゲ藪になった。どこが歩きやすいかよくわからないので三人バラバラになる。右からトラバース気味にいったきたっちさんがどんどん先へ。それよりは上をトラバース気味に行くきりんこさんの後をついていくがついに発汗、心拍数だけではなく軽く頭痛がしてきた。熱中症になりかかっていると思われる。足も上げ下げしにくくなった。
これはどうしようもねえなとナゲ藪内に座り込み秘薬(スポーツドリンクの素)を直飲みする。この技を使うのは谷川から巻機に縦走した時以来だ。少し先の藪できりんこさんが心配そうに待っていてくれる。水も残り3Lくらいになったが出し惜しみしている場合ではない。ここまでけちり気味(当社比)にきたのが体調悪化に拍車をかけたのだろう。カロリーも補給。少し休んでまあ動けるなという感じに回復したので先に進む。暑さにやられてわりとやばかった。
1420m辺りに7:56。休憩したせいもあり1380mから30分かかっている。
ナゲ藪の間の獣道利用でどこまでも行ける・・・はずもなくその後またナゲ達と交流を深めた。
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1450m辺りの小ピーク辺りをそれと意識せずに歩いていくと、先頭がこの先崖だという。まあここは雪田爺さんの記録にも書かれているのだがすっかり忘れていた。
あまり深いこと考えず横に降りてトラバースしますかということになり、躊躇せずきたっちさんは東側に滑りるように降りた。わりと急でロープつかった方がいいような感じもするが灌木はえているのでそのまま降りた。着地時に滑って焦ったのは内緒だ。
無事越えて鞍部から崖を見上げる。
8:13。
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鞍部から登り返して左側が崩壊地の写真で伝わらないやばいところ。
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きたっちさんを先頭に、僕、きりんこさんの順で細尾根を歩いていく。
それなりには歩ける程度に回復しているが、この先これを維持するには水が足りない気がする。暑さは和らぐ気配はなく増していくばかりだ。今日は曇りじゃなかったのか。残り2.5Lあるのだが今日の暑さだと心もとない。三界岳まではいけるだろうから、その先やっぱり野門沢源流に逃げようかなあ。
この先どう生き延びるか思案しつつ歩いていくと、ここで僕の生存本能が今日一の仕事をする。
何か水音のようなものが聞こえてきたのだ。しばらく前も聞こえていたがそれは明らかに下の上タケ沢のものだった。今回は違う。すぐ先の斜面からしているような感じだ。きりんこさんにも確認をとると水音が聞こえるという。幻聴ではないらしい。
少し進むと水音がよりはっきりする。先を行くきたっちさんにも水場確認してきますと叫び、さっきまでのそのそ動いていた足を俊敏に動かすと、僕は1460m先からナゲを横切り下り気味にトラバースして水を求めて進んでいった。
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尾根からトラバースするとすぐに沢形発見。確実に水が流れている。後は汲める感じになっているかどうかだがあっさりと水源にたどり着いた。トラバース開始から1分。冷たい水がこんこんと湧き出ている。まさかこんな稜線近くに水場があるとは。
写真だとあれだがわりといい感じに水は出ていた。8:23。
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水は冷たいし稜線近いし最高の湧水である。救済の水場。
下タケ沢で汲んだ水なんてもういらないなとサッカー選手のようにペットボトルの水を頭から被った。これが効いた。火照ったからだがすっと冷えて体調がかなり回復した。
水を汲んで一気に2L飲む。体の内側から冷やしたかった。
存分に水を飲みカロリーも補給してすっかり元気になった。水を補充して5Lとする。もうこれで一里ヶ曽根水場の往復もする必要がなく体力と時間に余裕ができた。
ここまでもここからも二人の足を引っ張るだろうが水場発見だけで今日の仕事を終えた気分である。
少なくともこれで生きて無事帰れることはほぼ確定だろう。野門から尾根伝いに三界岳、そして女峰山へ。ようやく勝ち筋が見えた。

続く