登山道わきで10分少々ぐてーっとしていると下山していくハイカーが数組。
時間的にも空模様的にもこれ以降山頂に向かうのは僕達だけだろうな。
こんなところでだらけている僕らはおかしな奴らだと思われただろう。
14:18、リスタートして女峰山へと登っていく。
休んだのと曇ってきて気温が下がったおかげで登りのわりには足が進む。まあ二人と比べると遅れるのだが。
しばらく歩いていくと辺り一面ガスに覆われ、2380m辺りで大粒の雨が降り出した。
普段だったらがっかりするところだが今日の僕には恵みの雨、これ幸いとクールダウンを図る。
きたっちさんときりんこさんは雨具を装着するがすでに自分の雨で服もザックも濡れそぼっている僕には雨具など不要であった。そのまま行く。
ナゲ達も濡れテカっている。
雨はどうでもいいが怖いのは雷。しかし遠くの北西の方からかすかに音がする程度だった。
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水を滴らせつつぶらぶらと歩いていく。
両サイドを固めるのはナゲ&ハイマツ。日光でハイマツと格闘した記憶はほとんどないのだがこのあたりでは暮らしているようで。地味に東側から女峰山へ向かいこのあたりから来るのは初めてだったりする。五年前に霧降高原からきた時は体力もなく水場でリターンしたから。
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14:53、女峰山山頂。
ガスガスで何も見えない。五里霧中でなかっただけましか。
確かこれで都合三回目の登頂成功。
女峰山へ霧降高原からは登頂成功したことがないのに、北側と南側の麓からはそれぞれ登頂成功したことになる。こんな妙なことになっているのは僕だけだろう。ついでに登山道を通しで歩いて登頂したこともない。
週明けに知ったことだが、この日数時間前には後輩の酒が女峰山に登っていたらしい。そういえば前から霧降高原から登ってみたいと言っていた記憶がある。
野門から僕が登っているとは夢にも思わなかっただろう。
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15時になったので帝釈山へ向けて歩いていく。
まだアップダウンは続いていく。
少し下るとガスが流れて。振り向けば女峰山山頂が綺麗に見えた。気づけば雨もやみ雷におびえる必要もなさそうだ。
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帝釈山に続く稜線にきたっちさんが佇む。
まるでアルプスのような稜線、というには緑が目立つか。
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歩いていくと残念ながら再びガスの中へ。
野門方面を見下ろせば、布引滝の下から雲が沸き上がる。
右方に見える三界岳。その先の岩場はここからでは全くわからない。
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ガスってなかったら左方の崖下が見えてわりと怖かったかもしれないなあという専女山に15:17。
帝釈山への鞍部へと下り、最後の登りは足に来そうなのできりんこさんに先へ行ってもらう。
振り返れども専女山から先はガスって見えず。
この辺りは木々が生えていて安心感。
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15:32、帝釈山。
ここから先は下るだけなので足も動くだろう。
座り込んで休憩。
あれだけ暑さに苦しめられた今日なのだが、この場所は風が吹き抜けるし日差しがさえぎられているので少し肌寒い。
びしょ濡れのシャツを脱いで絞ると汗か雨かわからない液体が大量に。持参した別のシャツに着替えると寒さも感じず快適。
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15:46、富士見峠へと下りにかかる。
最初はナゲ藪の間にくりぬかれた通路であったがすぐに樹林帯をひたすら下る道に変わった。
大雨の際は抉られるのか凹んでいて歩きにくい箇所もあり道横の上段を歩く場面も多かった。先頭のきたっちさんはずんずんと下っていくが体感上長く感じる下りでまだここまでしかきていないのかと嘆いていていた。代り映えしない景色に飽きてきたが下りで足に余裕があり、きりんこさんと四方山話をしながら降りて行ったので僕はそこまで長く感じずに済んだ。
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16:36、富士見峠。
以前は西の小真名子から下ってきて、南へと歩いていった。今日東から下り北へ進むのでもうここに来ることはないかな。
野門方面にも案内標識がありあたかも登山道整備されてますという空気があるがこれがクセモノ。
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少し休んで16:44、野門へと下山開始。
最初は昔は車も通っていたのかと思わせる幅のある道だが、トラバースしていき沢形を横切るところでは大きく崩れている。つづら折りの登山道を馬鹿正直に歩くのが面倒だったので2020mから沢を降りていく。水流なし。
距離的にはかなりショートカットしたがこの沢、あまり下りにはよくなかった。つるつる滑るので気が抜けなくてわりと沢横の藪を歩くことに。その藪も崖になっていて沢に戻って下るパターンも。
急なところもノーロープで下れはしたが果たして時間の短縮になったかどうか。
沢下降開始してから17分後の17:07、1930mちょうい上くらいでつづら折りの終わった登山道に合流した。
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この登山道がまた中々のもので。整備されなくなって何年たつのか知らないがドラム缶だの土管だのを見た先から次第に雲行きが怪しくなってきた。
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登山道がだんだん狭くなり針葉樹の幼木の隙間に続く踏み跡をたどるようになるのだが、並行して存在する沢形の方が明瞭で歩き易かったりする。
そのためそちらを歩いていきしばらくすると行き詰まり、あれっとなったら少し前に登山道が分岐しており三人うちだれかが気づいて修正。そんなパターンが何度もあった。おまけに倒木も何度も乗り超えることになり面倒。
1850mくらいからは地形図の破線路と歩いている位置が一致しないので不安になるが明らかに道はあっていた。標識もあったし。
皆三界岳へのルートとその先の核心部ばかり気にしてここの廃道になりかけている登山道はおざなりにしていたのが裏目に出る。何故道のない藪尾根ではルーファンに困らず、登山道で不安になりつつ歩いているのか。もう少し暗くなったら正しく道をたどれる自信がない。きたっちさんが三人で来てよかったというが全くもって同意した。薄暗くなりそうな時間帯にこの登山道初見で歩いていると心細くて仕方ないだろう。
きりんこさんの上司がここを下られた記録だけ持参しているのだが、上司の方はガスガス&暗闇の中ここを一人で下り道がよくわからないのと破線と登山道が一致しないせいで相当時間がかかり下山完了23時過ぎになったらしい。まあ暗くなったうえにガスってたらそれもわからなくなもないなという感じ。地図が間違っているのでどうしようもない。
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1775mくらいまでくると幕営道具の残骸。これはYoshiさんの記事でも見ていた。昔からあるらしい。
まあちゃんと道を間違えていないようで安心する。18:06。
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しかしその先しばらくで道を見失った。
GPSを見る限りちゃんと登山道上にいるはずなのだが道型は全くない。帰ってから知ったことだが先ほどの残骸辺りから東の谷間に向けて下降していかないといけないらしい。僕らは地形図の破線に従い尾根を北に行くものとばかり思いこんで進んでいたので分岐を見落としたのだ。
世間的には地形図を読まず、他人が歩いたGPS軌跡を辿って歩くことを蔑視する風潮もあるが、こんな登山道があると他人のGPS軌跡を信じて歩く方が賢いのでないかと思う。まあ登山道だからと舐めて下調べを怠ると痛い目に合うという教訓だ。

さて、通常の真っ当な人間であればここで最後に案内標識があった個所まで戻ろうとするところだが僕らは面倒だったのでそのまま北へ進んでしまった。
元より道があろうとなかろうと歩けるなら関係ないと考える藪界隈の人間の悪いところが出た。しかし三人で微妙に散開して進んだが道は見つからず。日没が迫ってきた。
なんとなく踏み跡があるようなないようなテイストの樹林帯尾根をきたっちさん先頭に下っていくが次第に倒木が半端なくなり進むのが面倒になる。何故僕らは藪尾根ではなく登山道があるはずのここで倒木地獄にはまっているのか。いや今現在は藪も漕いでいるのだが。おまけに雨上がりのせいで倒木が滑る。面倒で手袋を外していたのが災いして、滑って左手をついたら薄皮一枚切ってしまった。肉が切れないでよかったねと言いう所だが露出部の汚れが気になる。手袋装着。
1730mまで空想上の道が存在する破線部をたどり下りてきたがこのままでは埒が明かない。真っ暗になってもヘッデンあるし焦りはないが面倒この上ないのである。
ここで一度落ち着いてきりんこさんの上司の記録を見てみると東の谷間を超えた尾根を通られている。そちらには踏み跡があるらしい。破線路は未確認と書かれていた。未確認というか道がないから正しいルートではないってことなんじゃないかなあ。国土地理院仕事しろ。
きりんこさんと相談し倒木地獄に飽きたのでとりあえず東の谷間に降りて尾根乗り換えにチャレンジすることにする。大分暗くなってきたので二人はヘッデンをつけて東の谷間へ。急斜面でどうかと思ったがまあ何か普通に下っていけた。ヘッデン取り出すのが面倒な僕はまだ戦える、と二人の灯りで谷間まで降りた。谷間が絶壁になっていることもなく1680mくらいで谷間に着地。
谷間はまだ少し明るかった。18:32。
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谷間を少し下り、登れそうなところで東の尾根に乗ると、噓のように明瞭な登山道が現れて笑ってしまう。地形図上は破線はないのに。
たまに枝が落ちているくらいで歩きやすい。
本格的に日が落ちて真っ暗になったので、ここで観念して僕もヘッデン装着。ヘッデンで余裕で歩けるし道迷いもなさそうな場所に来て安心。
さっき切った傷口を水で流すが少し砂が入っている。下山後にどうにかするか。
そこから林道終点までは正味20分程度だった。大した距離・時間でもないのに体感長く感じたのは真っ暗だったからだろうか。
19:00に二人より少し遅れて林道終点につくとそこからは綺麗な舗装路でもう何も怖くない。
テーブルとベンチがあったので一息つくと、きりんこさんは一足先に下って車回してくるんで休憩しててくださいと言い、颯爽と一人暗闇の舗装路へと進んでいった。膝痛めてるはずなんだけどなあ。
きたっちさんと10分ほど休憩してゲートへと下っていく。
衝撃的なのはここまで14kmしか歩いていないということだ。14時間40分で14km。きたっちさんも今まで一番大変な14kmとか言っていたような。なお、この先泣きの舗装路歩き4km。
舗装路なのでストック利用して素早く下れるのだがさすがに疲労が足に来ており歩くのやっぱつれえわという感じに。まあ歩かないと帰れないので歩くのだが。固いアスファルトの反作用が足に来る。地味に標高を下げて行くのもつらいがなんとか20:05、ゲート前に到着した。疲れ切った。
流石にまだきりんこさんは車を回収してやってきてはおらず安心した。

座り込んで燃え尽きているときりんこさんが到着。乗り込んで広い駐車に戻りきたっちさんが自分の車に乗り込む。僕の車を停めた路肩まで戻り、着替えてほっと一息ついたところで時間も遅いので解散。15時間越えの死闘は幕を閉じた。
栃木の有料道路が土日無料なのをいいことに鬼怒川有料道路で悠々と帰る。コンビニでアイスブロックとコーラを入手し冷やして飲むと、ようやく山から日常に帰ってきた気がした。
後日、この日に父が三界岳ならぬ奥三界岳に登っていたことを知った。奥三界岳の方が名前的に登るの大変そうだが現実は逆だ。この三界岳も何かの間違いで日本400名山とかになったらハイカーが増えるのだろうか。そんな日は永遠に来ないだろうな。
なお筋肉痛は三日くらい完治しなかった。

今回の軌跡
この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
無題
水場
無題2
そんなわけで何とか野門から尾根通しで女峰山へ登り帰ってこれたわけだが、やはり一番の問題は登る時期であった。
去年の八月後半那須に行った時は涼しいくらいだったのだが今年の夏が暑いのか日光が暑いのか、初っ端から熱中症になりかけるレベルで。適期は9月後半以降か梅雨入り前。日の長い5月末くらいが日帰りでは最適なのではないだろうか。涼しかったら2時間くらい早く帰れたんじゃないかと思う。
野門から尾根通しで三界岳、さらに女峰山を目指す人間は今後もほとんどいないと思うが、野門からの尾根三本はどの尾根を選んでも藪漕ぎは避けられないのでどれを選ぶかは難しいところ。今回利用した上タケ沢・下タケ沢中間尾根は1450m辺りに水場があるというのは大きい。偶然たどり着いたわけだがこれが今回の生死を分けた。ほかの尾根も水場は探せばあるのかもしれないが。
三界岳先の核心部の岩場、一応現在でも東側・西側どちら側からでも通過できることが分かった。どちらに行くかは好みだが、ロープ一本は持って行った方がいいと思う。
富士見峠から先、破線路があてにならない場所も困ったが他の場所も針葉樹が育ち道が分かりにくい箇所があるので暗くなってから通過するのはやめた方がいいだろう。

散々暑さに苦しめられて、翌週は涼しい場所に行こう。そう決意した僕であったが、結局天気の関係であまり涼しくない場所へ行き、案の定暑さに苦しむ羽目になるのであった。