渡渉して対岸を振り返ると、登山道のすぐ上流左岸側に細い流れが注ぎ込んでいる。
こいつが水場なのかと上を見ると、この流れはすぐ上から湧き出ているようだ。
冷たい水がいい感じに流れ出ている。湧いている地点へはちょっと数段登らないといけないがこれだけ水量があればそこまで気にしなくていいだろう。
空のペットボトル片手に近づく。ヌメる岩が滑って焦った。
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いい水ゲットしたしもう一本ペットボトルに詰めて今日明日の分6.5Lゲットだ。
と思っていたのだが持参したはずの空ペットボトルがもう一本ない。焦ってザックの中身を全部出すがないものはない。困ったなあ。
しかし今日はここまで1.5Lしか飲んでないしこの先は標高400mくらい上げる程度でのんびり行っても2時間かからないだろう。最悪火打ち山から下って池の水ろ過して飲めばいいし。
4.5Lの水で何とかすることにした。
そうと決まれば今日の昼めし予定のコンビニ食料は夕飯に回す。
逆に夕飯予定のスパゲティをゆでてしまおう。ここなら水が無制限だからな。
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昼飯を食べてついでに水を1L以上腹に流し込む。これによりこの先行動時の水分摂取を抑制する腹積もりだ。さっきも汲んだばかりの水をがぶ飲みしたので流石につらかった。水中毒というのもあるらしいのでこういう馬鹿なことはマネしてはいけない。
随分のんびりと40分ぐらい滞在したのでそろそろ先行くかと荷物を詰めなおす。
すると登山道を下ってくる人影一つ。若手ハイカー現る。
挨拶すると返事は来るがそっけない感じ。日帰りですかとと聞くとイヤイヤ火打から縦走ですとの回答。そこで僕も明日は火打へ縦走するつもりなんですよと言うと縦走兄さんが笑顔に。人気なさげなルートを辿るもの同士心が通じた瞬間だった。
打ち解けた縦走兄さんの話を詳しく聞いてみると昨日燕温泉から入り妙高山を経て高谷池でテン泊、今日は火打・焼山を経てここまで到達。杉野沢橋まで下りたら友人に迎えに来てもらうらしい。いいなあ、車二台あったらそれやりたかった。笹ヶ峰登山口と燕温泉登山口はバスと電車利用で行き来はできるがあまりアクセスはよくないのだ。
縦走路の藪具合どうでした?と核心を尋ねると衝撃の答えが"縦走路は整備されてて藪無かったですよ"
は?まじかよ。それじゃ藪稜線歩きに来た僕、ただの馬鹿じゃん。
8月末に縦走した記録では未整備のはずだったのだが9月に入ってから紅葉シーズンに向けて急ピッチで整備したのだろう。新潟のやる気はすごいな。
ちなみに藪濃かったのはこの先1700mから富士見峠の間らしく、コースタイム通りしか下れなかったとか。1時間20分かかったという。縦走兄さん道が良ければ大分タイム早そうだしなあ。
杉野沢橋からここまでのコース状況を聞かれて答える。わりと整備されてて橋から2時間くらい、渡渉問題なしと答えるとうれしそうだった。
ついでにそこの水場岩がヌメリますよと教えておく。
有意義な情報交換ができたところでお互いお気をつけてとお別れ。
ここで縦走兄さんから稜線藪なしの情報を得たことが翌日の運命を変えることになる。
水を汲みに行く縦走兄さんが僕を足を滑らせたところと同じ個所で少し滑りかけて、そうそこなんですよと二人苦笑いして立ち去った。12:52
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焼沢を離れてトラバース気味に歩いていく。
初めは最近整備されたらしくとてもいい感じな登山道だったが縦走兄さんに聞いていた通り1700m辺りからやおら藪めいて来た。
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狭いトラバースもあるが藪がつかめるので安心。
緑色の奴らはネマガリやナゲのような強靭さはなく通行に支障はない。藪めいている割には地味尾根ハイカーには気にならない感じだ。邪魔になるのは道にはみ出た逆茂木ども。
こいつらのせいで歩行速度が出ない。
まあ急ぐ旅路でもないので適当に登っていく。
登山道にちょっとしたアクセントがあるせいか重荷が増えた割にはあまり気にならなかった。
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右に左に折り返しつつ標高を上げていく。
まっすぐ登れる場所の方が逆茂木が邪魔にならなくて楽だったりして。
藪めいているがテープのマーキングがしっかりあり迷うことはない。
1890mくらいで一瞬だけザレを通過するとその先からはわりと展望が。
曇天歓迎な快適な気候で最近2回の歩きはなんだったんだというぐらい重荷のわりには体が楽だった。
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1980mくらいに14:01。
大分標高を上げたのでここからは緩くトラバースで標高を上げていく。
前方に見えたのは2003mピークだったのであろうか。
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このあたりから踏み跡のある藪漕ぎもどきの場面も出てくる。
ソフトタッチな薮なので労することはないのだが、雨上がりだとびしょ濡れだなと思った。
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富士見峠が大分近くなってきた。
地獄谷の結構下の方にまだ雪渓が見える。沢水が冷たいはずだ。
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天気は回復傾向、青空も見えてきて焼山も尾根の向こうに頭を出す。
紅葉にはまだ少し早いようだ。
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2050mを超えると登山道に笹薮が覆いかぶさる。
しかしこいつらネマガリではない。足元はお留守だしかわいいものである。
明日は藪がないらしいしこれくらいは触れ合っておくか。
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富士見峠手前へと気持ちよく尾根を登っていく。
ガスが通り抜ける裏金山への稜線が左手に。
右手の焼山も間近に見えて。明日が楽しみになってくる。
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尾根を登り終えて、主稜線、富士見峠はすぐそこ。走り出したい気持ちだがここで突如現る唯一の核心危険個所。
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垂直の崖ではない分怖さは緩和されるがずざーっとすべったら数十m下まで草木がないのでやばいところだ。細い踏み跡に足を置き、灌木掴んで渡ったが灌木も頼れる奴はここはちょいと少なめ。
1分もかからず通過できたがここは一段上の藪に突っ込むのが安全だと思われる。
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危険個所を通過すると1分もたたず富士見峠に到着した。14:34。
広く刈り払われておりテント張れそう。
特別保護地域だがこれだけ整地されていると許される気もする。
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裏金山・金山・雨飾山へと繋がる稜線。あちらは整備が行き届いているようだ。
気持ちよく歩けそうな割に人影はなく。いつか行ってみてもいいだろう。
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景色を少し眺めて一息つくと、今晩の宿へと向かった。
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少し秋めき始めた北側斜面。
泊岩分岐方面への登山道もさっきまでの藪は嘘のようにきれいに刈り払われている。
実際は大したことない藪だが世間的には敬遠されて皆整備の行き届いた北側から登るのだろうな。そこに僕らのつけいる隙があるのだが。
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夏場までは雪渓が残り貴重な水場となるらしい谷間。まあ流石に溶け切っているだろうと今日は焼沢で4.5L汲んできたわけだがやはり正解。
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少し尾根を下り、泊岩分岐は谷の反対側に回り込むのか、面倒だなあと思ったがてくてくと歩くとすぐに分岐へと辿りついた。14:45。
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笹倉温泉へのルートを分けて泊岩・焼山方面へと進む。
ちょっと登りがあるので足が重くなるがまああと少し歩いたら小屋で寝るだけだし。
森の小道を歩いていくと5分とかからず案内板についた。ここから左に泊岩があるらしい。
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14:50、今晩のお宿、泊岩の避難小屋についた。
岩屋の下なので安心感はあるが周囲はトタンで囲まれただけで断熱性はなさそうだ。
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そういえば山小屋なんて泊まるのは随分久しぶりだなあ。
5年前に友達と富士山登った時以来か?富士山の山小屋は一人分のスペースがとにかく狭かったなあ。
5年ぶりの山小屋に少しわくわくして扉を開くと、そこは(一人で寝るには)十分広かった。
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奥の方は岩がつかえるのか天井低め。床は土の地面の上に分厚い発泡スチロールが敷き詰められた斬新なスタイルだ。The納屋といった感じ。
まあここは山小屋ではなくて避難小屋だし贅沢は言わない。意外にも黴臭くないしトラロープが渡してあり濡れた服を乾かせるようになっている。火山が噴火した時のためか新しめのヘルメットもある。発泡スチロールの上にじかに寝るのは・・・という人のためかブルーシートあり。発泡スチロールがなくて地面むき出しの箇所と横に木材があるのでそこで炊事はできる。一晩過ごすには問題ない機能がそろっているので及第点だろう。
今時のなんちゃってハイカーには敬遠されそうだが、普段の僕は雨の中泣く泣く笹薮の上にテントを張ったり、狭いスペースをみー猫さん、木の根と分け合ってテントを張っていたりする人間である。平らな床があるだけで贅沢というものだろう。
とりあえずブルーシートを広げてシェラフ・シェラフカバーを設置。暇になった。
縦走兄さんが今日は泊岩に泊まる人はいなそうですよと言っていた通り誰もいなかったしこの時間からくるやつはいないだろう。一人で寝るのは怖くないが退屈過ぎてどうしよう。電波はいらないしここ。
とりあえず軽く汗ばんで濡れた服を乾かせないかとしばらく体操座りしていたのだが、さすがは標高2050m越え。寒くなってきた。これは風邪ひくなといそいそと着替えてロープに干した。着替えはあるのだから最初からこうすればよかったのだが。
シェラフに潜り込むと発泡スチロールは思ったより硬かったのでエアマットを膨らませた。快適。

2時間ほどだらだらしていたが暇になり外へ出る。寒いのでペラペラダウンを羽織った。
よく見ると岩場ににょろりとナゲ一匹。今晩の同宿相手はナゲだけか。まあナゲは外、僕は内なのだが。
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夕焼けを見ようと思ったのだが17時半ではまだ早かったらしい。寒いので引っ込む。
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18時近くなりようやく暗くなったので再び外出。
夕焼けを見て引っ込む。しかし今日の夕暮れ時は寒いなあ。明日の朝大丈夫だろうか。
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一人だとすることもないので晩飯を食べるとさっさとシェラフにくるまった。
夏用シェラフとシェラフカバーでは今日の寒さが限界くらい。これから先は分厚いシェラフじゃないとつらいかもなあ。家じゃないと熟睡できない僕は2時間おきくらいに起きる浅い眠りで朝を待った。浅い眠りでもずっと横になっていたので疲れは割と取れて。暇なのでさっさと夜が明けないかなあと思った。

初日の軌跡。登山道は破線路通り。
この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
無題
焼沢の水場。この季節は実質焼山まで最後の水場。
無題2

(天候が)急変の二日目に続く