2020.10.2(金) 同行者:みー猫さん
川古温泉手前駐車場 -小出俣林道 -千曲平 -オゼノ尾根(オオビノ尾根) -小出俣山 -谷川乗越 -無名沢下降 -赤谷川本谷遡行 -ゴルジュ
-1520m二俣手前草原(泊)→二日目に続く

藪を乗り越え癒し渓へ。
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前記事にも書いたのだが以前より赤谷川本谷の上流へ行きたかった。それも紅葉の時期に。
実のところいってみたら大した沢ではないのかもしれないが、沢屋しか見られないという光景には心惹かれるものがあった。そしてその場所に沢屋ではいかないであろうルートで向かうことにも。人が行かないルートには不安を覚えるとともにそれ以上の面白味があるのだ。地形図を眺めて情報のない箇所に想像を膨らませる。これがなければ登山の楽しみは半分ないようなものだ。

赤谷川本谷・阿弥陀沢の下部はドウドウセンなるやばそうな大滝が連続する厳しいところが続き、僕が遡行しようと思ったら何度阿弥陀如来と邂逅するはめになるかわからない。そのためそのやばいところを超えたところで赤谷川本谷に降り立つ必要がある。
そんな都合の良いルートがあるのかと言えば実は存在する。谷川乗越から赤谷川本谷に注ぐ枝沢だ。ここはとくに滝もなく簡単に下降できるらしい。
谷川乗越へは谷川本谷を詰めれば良いのだが、こちらは2級上の沢で沢屋的には大したことないようだが唯一の核心部がロープを出した方がいいらしくこれまた僕には厳しいルートだ。
そこで藪屋しかやろうと思わないルートを取ることにした。オゼノ尾根で小出俣山へ登り、谷川乗越へと藪を漕いでいくルートだ。小出俣山から先の記録はネットでは見当たらない。
小出俣山は群馬百名山に選ばれているらしく登山道はないが残雪期にはよく登られている。僕は積雪期・残雪期限定という言葉が嫌いだ。傲慢さを感じる。藪と語り合う根性が足りない逃げの姿勢なのではないかと。
小出俣山に登るオゼノ尾根は登山道がないわりにはちょくちょく無雪期も下りでは利用されている。それはここ数年で人気上昇中?のマチホド沢の下山路として利用されているからだ。まあ年に数PT程度のようだが。
下りとはいえ沢屋が歩けるならまあ登りでも行けるだろう(慢心)。しかし下りでも四時間以上かかったり三時間程度で下れたりと随分まちまち。下部で枝沢利用で藪を避けてショートカットも考えたがどうやら1350m辺りより下は踏み跡が拾えることもあるらしい。そして藪の主役は笹のようだ。
笹薮は登りと下りで全く労力が違う。1.5倍から2倍かかってもおかしくない。
1350mまではそれなりのペースで進めるとしてそれから先は厳しい戦いになるだろうと踏んで尾根取りつきから小出俣山まで5時間半でいければ御の字と読んだ。藪屋の歩きではsayano999さんが2回歩いているので様子は参考になったが無雪期登りで歩いた記録はろくに見つからないので時間を余裕をもたないといけない。
小出俣山から谷川乗越までのルートでかかる時間は未知数である。歩いた記録はほとんど見当たらず、かろうじて小出俣沢右俣を詰めて谷川乗越へ向かったら想定外に濃くて一時間半かかったという簡潔な記述の奴はみつかった。小出俣山から下っていく薮の具合もわからないがまあ一時間半かかるとみておく。
谷川乗越から赤谷川本谷下降後に存在するゴルジュやらだけは気になったが最悪泳げばなんとかなるらしいので現地対応。そこを超えたら後は流れだ。

赤谷川本谷はみー猫さんにそのうち行きましょうと話した初出が2017年の秋。その時は谷川・巻機の藪縦走に出かけ、2018年は僕が鼠経ヘルニア手術後のため足尾にこもり、去年は天気がゴミだった。実に三年越しの実行となる。


9月半ば、10月頭にどっか行きましょうとみー猫さんに声をかけた。
今年は存在が消されたオリンピックの影響で10月頭の三連休がない。ないなら作るまでよと有給を使って土曜か月曜休みにして出かけるつもりだとみー猫さんに言うとOKがでた。
実のところ本命は山形方面であったが天気が微妙なのでこちらは中止、あちらも計画したままの奴らがいくつも実行に移せないままだ。
谷川方面も二泊三日で行きたい場所が他にあるのだが日曜の天気が微妙なようで。
それならばと赤谷川本谷の計画をようやく実行することにした。

10/2、登山前には珍しく4時間熟睡し1時半に家を出る。
高速を走っていくと月夜野ICから先が炎上事故で通行止めになっておりびびった。仕方なく下道に降りて集合場所の白毛門駐車場に4時くらいにつく。既に結構車が止まっている。平日の早朝なのに。
集合時間は4時半だがみー猫さんは既に到着していた。
それなら早めに行きますかとレガシィはここにデポしみー猫号に乗り込み移動する。
ところでこの車なんてやつですか?と聞くとジムニーだという。これがジムニーか。みー猫さんが車を買い替えたのは知っていたが何に替えたのかは知らなかった。納車一年待ちだったらしい。

川古温泉手前の駐車場に到着。
何かの工事のためかプレハブ小屋があり少し駐車スペースがすくなくなっているようだ。暗いのでよくわからないが。
準備をするがこの先の林道ヤマビルの名所である。みー猫さんは先日も彼らと顔を合わせたらしいがまだ僕は取りつかれたことはない。ヤマビルにも聞くという虫よけスプレーをしておいたが、みー猫さん持参のヤマビル専用スプレーもかけてもらった。
ヘッデンで出発5:06。荷物が重い・・・。この前テン泊装備で歩いて耐性つけただけましだが今回は水3.5Lと沢装備もあるためつらい。

歩き出しは真っ暗だったが5時半にもなればヘッデンいらないくらいに明るくなった。
貯水施設か何かの横を通り過ぎる。
カラマツの植林を自然に返す試験中とかいう看板を見かける。これ去年板幽沢行く途中でも見たようなやつを見たな。
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十二社ノ峰にみー猫さんが登る際取りついた尾根がこの辺りなどと話をしつつ歩いて行く。
千曲橋近くで川をのぞき込むと水はなかった。
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5:55、千曲平橋。荷物が重いからもう少し時間がかかるかと思ったが順調。
千曲平の824m地点を過ぎて少し先のオゼノ尾根末端に6:04。
気温が低かったせいか懸念のヤマビルたちは全く姿を現さなかった。
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ヘッデンをしまい、歩いているうちに暑くなったので羽織っていた合羽の上を脱ぐ。
一息ついて6:10。みー猫さんトップでオゼノ尾根へ取りつく。小出俣山へ何時につけるかでこの先の予定が変わってくるわけだがさて。
最下部は打ち捨てられた植林みたいな感じで藪漕ぎは皆無。
950mくらいまでの急傾斜が単純にテン泊装備にはつらかった。
尾根に乗ると笹薮のお出ましだが踏み跡があるので大したことはない。
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6:35、1000mくらいにあった倒木ベンチで一息。
ここまで踏み跡のおかげで藪漕ぎの苦労は全くない。つらいのは荷物の重さだけだ。思ったより楽勝かとも考えたがまあ本番は1350mから上らしいしと気を引き締めるてここからは僕が前に出た。
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そのすぐ先で見慣れたにょろりとしたイキモノ達がたむろっていた。
藪の番人、シャクナゲさんである。
随分標高低いところで暮らしているな。
ちょっと通りますよ・・・とナゲ達の隙間にある踏み跡を歩いて行くと簡単にナゲゾーンを通り過ぎてしまった。僕のザックの上蓋はこの日ひたすら左側に傾いていた。
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全般的に軽く藪めいているのだが踏み跡は続いていく。
これだけで普通に歩けるので楽々だ。
日々ゲロ藪達と肩寄せ合う僕らにとっては里山散歩道だが、慣れない人には先に進む道が見えないのかもしれないとみー猫さんは言う。何故か二回ほどプラ杭を見た。
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少し傾斜がましたが薄い踏み跡は続き気楽に歩いて7:12、1190m辺りについた。思っていたより順調でいいペースだ。下部は下手に枝沢行くより尾根伝いの方が断然早いだろう。
藪が薄く乾いたスペースで休憩。
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7:21、歩きを再開。
みー猫さんにトップを交代。
灌木が茂り笹薮は薄めに。これはこれで灌木がふさいだりするのだが踏み跡を辿ればそこまで苦労しない。
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8:07、1370m辺りにやってくると久々にナゲ達が蔓延っている。姿を見かけない間は何をしていたというのか。
アズナゲ達の隙間を通る。
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しかしここまでの踏み跡は何だったのだろうか。こんなところまで山菜を取りに来るものだろうか。獣道だったかなとも思うが、みー猫さんが明らかに人工的に切り取られた幹を発見。
帰ってから調べると2005年に、どこまでなのか、目的は何かとはわからないが一度刈り払いされたことがあるらしい。これはその時の名残なのだろう。
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ナゲ達に別れを告げ、地形図ではわからない鞍部に少しだけ下り登り返していく。
ここからはまた僕がトップで。
すると踏み跡は曖昧模糊に。まあこれくらいの藪ならいいかと進んでいくと岩場が現れた。ははあ、こいつが事前情報に合った岩場か。1400mくらい。みー猫さんは残雪期に小出俣山に登っているので岩場を覚えているらしい。
とりま右巻きで。荷物が重いので直登は一顧だにしなかった。
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なんとなく踏み跡がある気がする岩場の基部を巻いていく。
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岩場を巻き終わると1420mくらい。
ここでモンスターネマガリが最大瞬間分速で牙をむく。あ、これやばいやつだわとこの先ずっとこれなら計画練り直しかと思われたが3分くらいで奴らは大人しくなった。かなり焦った。
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再びおとなしい藪尾根に戻り心から安堵。ベビナゲがにょろづいているが障害にはならない。
意外なことに薄い踏み跡らしきものは続いておりある程度楽ができそうだ。
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藪間から見えた名もなきピーク。
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薄い踏み跡で藪をガサガサ。
足元がお留守なだけで随分楽なものだ。
1450mから傾斜が増すので藪密度が濃いと時間がかなりかかる。
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8:46、1500m手前辺り。
笹の密度と高さが増してきた。
とんとんルートを外すとちょっと手間取るようになる。
元より薄い踏み跡なので倒木跨いだりすると見失ってしまうのだ。
このあたりから後続のみー猫さんを少し待つパターンが出てくる。今日はあまり調子がよくないらしい。少し寝不足だとか。いつもなら待ってもらうのは僕の役目であるが、今日はなぜか体調がよかった。いつも登山前はろくに眠れないのが4時間も熟睡できたからだろう。まあこんな時も下山時先にへたるのは僕なのだが。
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まあこれくらいの笹薮なら多少踏み跡外してもいけるでしょと適当にまっすぐ登っていたら"油断するなよ?"と突如笹薮が深くなって絡めとられる。
もがいて脱出したが藪深いのは一時で助かった。
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再びそこまで深くない薮に戻り、今度は楽をするためにとんとんルートを注意深くたどる。
1550mから傾斜が緩み歩きやすくなるかと思ったがそれなりに藪が濃いのでそうでもなかった。
1580m辺りからまた少し藪が濃くなり、1600m辺りに9:18。
こここからしばらく平坦ゾーンで楽勝!!なんてことはなくとても藪い。
でも灌木と笹のコンタクトラインはなんとなく進んでいける。進めない薮ではないのだ。
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中々藪いなあと苦戦するが、意外にも足元がお留守なところもあったりして。
ようやく目指す小出俣山が見えた。顔が藪より上に出て景色が見えると開放感から気持ち楽になる。
左右灌木に囲まれた中、不自然に笹ロードが続くと大昔に道があったのではと思ってしまうが、前方の
灌木薮を見るとそんなこともないんだろう。
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"まあゆっくりしていけって"
イヌツゲとアズナゲの面倒な灌木コンビが行く手が阻む。存在も地味、通過するのも地味に厄介な奴らだ。
こいつは面倒なことになったなと思ったが意外とコンタクトラインはするりと通過できた。
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このあたり(1600mライン)ではナナカマドもそこそこ色づいている。
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展望が良いのは一時でまたもや背の高い灌木の下へとご案内。
しかし笹の背がそれほど高くなくわりかし捗る。薮めいているわりには。
これくらいの藪なら山頂まであと少しかな。
標高的には大したことないし、たまに踏み跡も拾えるし。
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そんなことを考えつつ10時に1670mくらい。
ここから事情が変わった。なんだか藪密度が急にやばくなった。
藪の中にえらく面倒な段差があり灌木利用してなんとか登るとその先でもはやおなじみのネマガリダケがスタンバイ。みっちり詰まってスクラム汲んでいる。背丈を超えるモンスターでないだけましだが・・・。楽勝という考えは捨てた。
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ガサガサ・・・やっぱ、つれえわ。
ネマガリの登りはいつだってつらい。僕は随分とプールや海に行っていないがネマガリ地獄で平泳ぎはよくしている。
胸高だけなのが救い。
後ろでやはり苦労して段差を超えたみー猫さんがネマガリ地獄に突入している。
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展望いいのだが曇天になってしまいがっかり。天気予報仕事しろ。晴れだったんじゃないのか。
左の台形が吾妻耶山か。
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ゲロ藪を泳いでいく。
ナゲや色づき始めた灌木たちが手招きしているがそれが罠。
あちらも足元はネマガリで固められていて楽ではないのだ。
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ガサっては少し休みで少しづつ登る。
みー猫さんを探せ!上級編。
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1730mまできて少し進行方向を変えると10:32。ネマガリゾーンで大分時間を食った。
まあここからも相変わらずネマガリ藪をがさる。
尾根センターはハクナゲ達灌木が蔓延っているので左側のコンタクトラインを行く。
晴れていたらとても眺めがいいのだが。
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小出俣山手前で進行方向を西へと変えて。
背の高い灌木薮を北から避けたがわりと面倒で南からがよかったか。
最後は周辺だけ不思議と藪の薄い山頂へささっと登りつく。
10:44、小出俣山。
高曇りだが谷川連峰の眺めは最高だ。
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疲れたとザックを下ろす。しかし三角点と山名板が見つからない。
みー猫さんは残雪期に来た時板があったはずと念入りに探す。
僕は電波が入るので三角点はそもそもちゃんとあるのかと検索するがよくわからない。
西へ進む稜線も中々きつそうだなあとか眺めてみたり。
ここは360°展望がよかった。展望がいいから藪漕ぎも報われる。だから晴れろ。
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僕はだらけていたのだがみー猫さんはわりと執念深く板を探しており、板は見つからなかったが三角点を発見。
ここに無雪期にくる人間はあんまりいないので割とレア。
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谷川乗越方面、1653m峰の南斜面に草原があり下部に鹿道が見える。みー猫さんも気になるようだが尾根上からあそこに下って登り返すのがね・・・。
近くは通るが縁はなさそうだ。
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赤谷川本谷をのぞき込むとデカそうな滝がここからでも見えた。やっぱりドウドウノセン辺りは僕には近づけない領域だな。
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滅多に見れない方角からの谷川連峰の眺め。
高曇りだがわりかし満足。群馬方面の青空をよこせとも思ったが。
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十分休んだしそろそろ先へ・・・と思ったが予定では12時にここだしもう少し休みましょうとのみー猫さんの弁で大休止。
まあ予定では6時半に尾根取りつき、12時前に小出俣山だった。6時過ぎに尾根に取りつき四時間半くらいで登れたので大分巻けたのだ。
とはいうこの先、谷川乗越まで時間は読めないしゴルジュの難易度も気になるところだ。
11:24、僕らは小出俣山を後にし谷川乗越へと歩き出した。
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続く