2020.10.16(金)
狐穴小屋 -中先峰 -以東岳 -稜線登山道をエズラ峰分岐まで -草原を下る -ハイマツwith灌木フレンズ
-エズラ峰 -稜線登山道へ帰還 -以東岳 -中先峰 -狐穴小屋 -三方境 -北寒江山 -寒江山 -竜門小屋→最終日へ
絶好の藪漕ぎ日和。
いつも通り家以外の場所ではあまり熟睡できない僕なので浅い眠りで一晩を過ごす。
ふと視界が明るくなった気がして朝かと思い身を起こすと、同宿のハイカーがヘッデンを付けて出発の準備をしていた。もう四時か。十分横になったし僕も起きるか。
寒いなあと思いつつ餅ラーメンを作り朝食を済ませる。その間に祝瓶山まで行くというハイカーはお先に失礼しますと出ていった。
荷物をまとめていると以東岳に行くハイカーも出発していく。まだ5時前なのに元気だなあ。当然外は真っ暗だ。寒いので合羽とダウンとフリースを羽織った。
小屋を出ると以東岳に向かったはずのハイカーがまだ小屋前にいた。星の撮影でもしていたのだろうか。ではお先にと出発する。4:59。
ヘッデン歩きだが道は明瞭なので迷わない。星が綺麗だが僕のカメラでは映らなかった。
少し歩いてふとよこを見ると笹に霜が降りている。通りで寒いはずだ。
30分ほど歩いていたらわりと暖まってきたのでダウンとフリースは脱いだ。
同宿ハイカーがその間に先行していく。ピストンだからとあらかたの重荷は小屋に置いてサブザックの彼は早い。僕もピストンなのだがエズラ峰まで行くと時間がかかるので全部背負ってきている。
5時半も近くなれば東の空も白んできたが思いのほか雲が多い。晴れ予報とは何なのか。
西の方は雲が少なくて明るい。
さて、以東岳はどんな面してんのかな?と思ったら前方の様子が?
池塘から先は真っ白な世界。また天気予報に裏切られたか。
何故か左右は展望があるのに前後の稜線だけガスに覆われて見えない始末。嫌がらせか。
先へ進んでいくと一面ガスに覆われて左右さえも展望がなくなった。
がっかり歩きが30分以上続いていくうちに、草原・笹原から花崗岩の砂地へと登山道は移り変わっていく。
6:35、1630mくらいまで登り返すと急に視界が開けた。ガスの上に出たのか?
振り向くとちょっと通りますよ・・・と一筋の雲がにょろりと尾根を越えて山形から新潟へ向かうと所だった。お前らの仕業だったか。
足元を見ると霜柱。やはり昨夜は氷点下か。この季節余裕をもって小屋にたどりつかないと凍死するな。朝日連峰の主稜線はテン泊禁止である。
中々長い尾根のようだが最後は奥まった沢へと末端が降りている。登山道もないし誰も行かないだろう。
中間点に笹原山なんて安易名前の山が存在するが、誰か歩いて行って笹原を確かめたのか?
三角点があるから大昔は誰か行ったのだろうが。エズラ峰より寂峰レベルは上だな。盲点だった。
笹原には紅葉の残滓もあって、冬と秋の境目にいるようだ。
空は高曇りだが、稜線を覆っていたガスはすっかり取れて。
僕は展望を楽しみつつ以東岳へと登っていった。
狐穴小屋から約二時間でコースタイム通りくらいか。
ここだけ切り取ると初冬の雰囲気。
同宿ハイカーは少し先に行っており、別のハイカーが山頂標近くにいたので少し話しつつ展望を楽しむ。
お互い朝方のガスにガクっときてからのこの展望なので機嫌がいい。眺めがいいからどこ撮ればいいのか迷いますねと言ったら、全部撮ればいいんですよと軽口の応酬。
タキタロウとかいう巨大魚伝説のある大鳥池を見下ろす。熊の形をしているらしいが確かに熊の毛皮を広げた感じだ。稜線、以東小屋のずっと先には化穴山が見えた。
周辺の草は霜が降りたというより半分樹氷のようにも見える。
それでいて少し先の標高を下げたところでは紅葉だ。
こういう境目を歩いているのは少し愉快。
細尾根では灌木たちとのバトルは避けられないようだ。
池塘の水をろ過して飲むことになるだろうか。
景気を眺めているうちに先客ハイカーはオツボ峰方面へと歩いて行った。
目立つ周辺のピークを拡大してみる。
月山。
正直に言う。このあたり初めての僕は最初これが飯豊だと自信がなくて、近くにいた同宿ハイカーに教えてもらった。
エズラ峰への分岐へは1kmくらいなのだが、またもやアップダウンがありすんなりとはいかない。
やっぱり昨夜は寒かったんだな。
大鳥池のタキタロウ伝説の真偽はともかくとして、80cmくらいのイワナが釣れたことはあるらしく、その標本がどこかに飾ってあるらしい。今年は紅葉が遅れたおかげで大鳥池周辺の紅葉的にはタイミングがいいとか。しばらく話して僕はまだ先があるのでわかれた。
エズラ峰への稜線、鞍部までの下りは前情報通り草原を歩いて行けそうでほっとする。
とりあえず笹薮を軽く下りて草原ゾーンを目指した。

この先は稜線から200m下ってその先でゲロ藪漕ぎだ。ピストンなので軽身で行くに越したことはない。無雪期にエズラ峰へいった記録を僕は二つしか知らないのだがその二人はとんでもない健脚の妖怪たちだ。彼らが日帰り装備で2時間程度で往復しているので昨日からの疲労もある僕なら3時間半程度は見ておいた方がいいかもしれない。
そう考えると鞍部までは水と食料を少しはもって行った方がよさそうだ。
ひとまず腰を下ろして休憩した後、サブザックのない僕はザックを上蓋を外すとカラビナでズボンのベルトを通す穴からぶら下げた。なんとも不格好だなあ。結局片手で支える形になるがどうしても両手を使って下る際には話せるだけましか。bonさんが首からクラリスをぶら下げるノリで行きたかったのだがそういうわけにはいかないらしい。
なんとも締まらない格好で僕は草原を下り始めた。7:57。
登山道がないわりには藪漕ぎもしなくていいため順調に下っていけるが草原はだだっ広く、見た目よりも距離があった。
朝出発した狐穴小屋方面を眺める。随分遠くまできたもんだな。ここはどこから歩いてきても遠い場所だ。
先ほどまでの凍える光景とは違いまさに秋という空気。
こういうところでテントを張りたくもなるが、この辺りは第一種特別地域なのでテント禁止である。
池塘の少し上で水音がしたので湧水かと期待したが、滴り落ちる程度の水で汲むのには相当時間がかかりそうだった。
池塘や笹原を避けて草原ゾーンを下っていく。
こう見えてここからの光景は割と貴重。オツボ沢左俣源頭に位置する。これで沢に湧水があったら草原で泊まりたい。でもテン泊禁止。悩ましい。
この先草原の終わりからいよいよ灌木達とのラストバトルだ。踏み跡さえもないらしい。
朝日連峰のゲロ藪初体験。
今この空間は僕だけの場所だ。
ここの草紅葉もいい感じだがこれを眺められるのもここまで来た者だけの特権。
稜線から30分とかからないのに、道がないだけで世間から忘れ去られた空間。
ザックの上蓋は邪魔なのでここへ置いていく。水を補給しペットボトルはデポ。食料は少し合羽のポケットに忍ばせた。
カメラとスマホ、ストックだけ装備していざ藪入り。8:20
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