藪の隙間を縫って前を進むきたっちさん。
しかしどうやら獣道に導かれたか少し右にそれているようだ。
藪の下りでは背の高い僕の方が見通しがきく。
ちょっと左修正した方がいいんじゃないですかと声をかけて尾根センターへと先に進むと地面に足がついた。踏み跡発見か。
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踏み跡ありましたときたっちさんに叫び先行して下る。
少しだけ踏み跡を拾えて空中戦回避できたのだが直ぐにわからなくなってしまった。
結局灌木オールスターズたちとの空中戦になるが下りは楽だ。幸いにしてハイマツの上を歩く区間はほとんどなかったし。
きたっちさん撮影。僕の頭だけ見えている。
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ふと左下を見てみるとネマガリ藪が広がっている。
尾根センターから少しずれるがあちらの方が楽そうだ。
登りでは逆目で地獄のネマガリ藪も下りとなれば素直なものである。
灌木薮を抜け出してネマガリゾーンへ。灌木達との触れ合いは数分で終わった。
ネマガリゾーンへ移ると獣たちもこちらを選ぶのかとんとんルートで足元が楽。重力に身を任せて胸高のネマガリゾーンを滑るように下っていく。
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尾根センターもネマガリ成分が増えてきたのでそちらへ移動する。
満開のドウダンツツジが立ちふさがるも一瞬。
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15分ほどで1750mまで降りてこられた。うまいこと灌木達を回避できたようである。
この先はYoshiさんの記録からはネマガリ主体のようだからまあ下りならそれなりに進んでいけるだろう。そうはいかんぞとナゲ達が立ちふさがるがナゲ藪の真ん中にルートあり。Yoshiさんが見たという枝払いの後だろうか。14年たっても藪は再生していないのかその後も刈り払われたのか。
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前方に地形図ではわからない小ピークが見える。
残雪期にこの尾根を歩いてことのあるきたっちさん曰く、雪があると厄介な場所らしい。
みー猫さんたちが今年の2月末に撤退したのはここだろう。
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近づいて行くと踏み跡が鮮明になりこれは楽だなと思っていたがピーク手前で踏み跡が右にそれていく。なんでだ。
下に降りていきそうに見えたので尾根直進し"おいすー"と待ち構えていたナゲ藪を突っ切った。すると右から踏み跡が合流してきた。損した気分。
かつて枝払いされた思わしき踏み跡沿いに小ピークへと軽く登り上げる。
たしかにこの段差は雪に埋もれていると怖そうだ。
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1730くらいの小ピークに登り上げて13:36。
古い枝払いの痕跡あり。
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マツとナゲを一跨ぎするとそこからはネマガリゾーンが帯のようにずっと先まで続いていた。
少し下ると腰高の笹薮中にとんとんルートが鮮明にこれは楽でいい。
快適に下っていく。
もはや敵は暑さだけだ。水は湧水大量に汲んできたから余裕はあるが。
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踏み跡が鮮明だったのはしばしの区間でその後は見失ってはまた見つけてという感じで。
上からは分かりにくいが足で踏み跡の有無は感じられる。楽さが段違い。
子犬の鳴き声のようなものが聞こえてきて。きたっちさんがハンターがいるのではという。いやハンターもこんなとこはこないでしょう。この季節だし。こんなとこに裏道ありました?と話しながら進むが声はすれども姿は見えず。
するときたっちさんが鳴き声のする方向の木の上にいる猿発見。どうやらこいつの鳴き声だったようだ。犬の鳴き声だとばかり思っていたのだが。
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猿と別れてからもひたすらネマガリ藪を下っていく。
緩い下りで踏み跡を見失うと少し足が疲れる。
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1618m地点を過ぎて西の鞍部に14:13。
低めの笹薮の中にぽつりと空間。
誰かがテント張ったんですかねと言うときたっちさんは鹿の寝床ではと。まあそちらの方が可能性は高い。
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この辺りまで来ると尾根センターと比較して北側斜面の笹は背丈が低く歩きやすいパターンが多かった。しかし標高下げすぎてもどうかと尾根近くや尾根センターの踏み跡を辿ることが多かったのだが。
1550mくらいまでは結構笹が低くなり歩きやすかったのだが何故かまた笹薮が深くなった。まあ胸よりは低いし踏み跡辿れるからいいのだが。
木々の隙間からウトウ沢川を見下ろす。きたっちさんから桃ノ木峠より南側の三島街道について話を聞いた。
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1500mくらいまで降りると笹は低くなり特に北側斜面は歩きやすい。踏み跡もわかりやすいし。
鞍部手前あたりは薮か少し薄く休憩するのにいい感じだ。
ここまできたら次の三角点ピークに登って休憩しようと話していたのだが、鞍部まで降りると再び笹が少し勢力を増した。下りから平坦、登り気味となるのと合わさって足に力が入る。
すると水分取っていたもののミネラルが枯渇したのか両足が痙攣し始めた。きたっちさんも下りながら足が重いと言っていたが僕の足が先に攣ったか。下りは全然休憩していないしなあ。鞍部あたりで14:47、時間もあるので7分休憩したら足の痙攣はおさまった。
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復活した足で笹薮を少し漕ぐと三角点ピークへの主な登り返しが始まる辺りで笹が急に薄くなる。ラッキー。一気に行きたいところだがまた足がつっても困るので地道に進む。
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15:03、1471.9m三角点ピーク、点名小佐飛についた。
プレートは木に食われているし何が書いてあったのかは判読不能。
無雪期にここに来る人間は稀・・・といいたいところだがここまでなら三島街道を歩いて桃ノ木峠からすぐだからそれなりにいるのではないだろうか。
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峠まで降りて休憩しましょうと三角点ピークを後に下っていく。
広い尾根なので踏み跡はあまりわからないが藪は薄いのでどこあるいてもいい。
適当にぶらぶらと下っていく。季節が外れているらしくギョウジャニンニクは見つからずいるのは毒のあるバイケイソウだけ。あれだけネマガリ藪を歩いたが食べごろっぽいネマガリは見つからなかった。いやたぶん食べごろのがあるところでは必死に藪漕いでて余裕がなかったのだろうが。
木漏れ日の中もう今日の歩きも終わりが近いなと歩いて行くと突如藪が切り開かれ、三島街道へと降り立った。
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土木県令、三島通庸。東日本の廃道探索が趣味の人では知られた名前。廃道には大して興味がない僕も名前と略歴ぐらいは知っている。栃木県民だと田中正造との対立で名前を覚えるのだろうか。
去年通過した二ツ小屋隧道三島の手によるものだった。彼がどれほど先の未来を見据えて各地で山中に道路を建設を推し進めたのかは知らないが、駆り出された地元民の負担はろくでもなかっただろうなと思う。
ともあれ桃ノ木峠に15:30。
稜線を離れてから2時間15分。三時間はかかると思ったのだが思いのほか早かった。薮は下りが早いのは当然として想定外に踏み跡を辿れたのが勝因だろう。
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予定より大分時間的余裕があるのでのんびり休憩。
きたっちさんはここでちょうど水を飲みほしたという。僕はまだ1L残っているので要りますか?と聞くとこの先のウドが沢で汲めなかったら下さいと。
15:47、下山再開。
左にカーブし遠回りする三島街道を離れて谷間と言うか窪地を下っていく。
1170mくらいで左から戻ってきた三島街道が右へとトラバースしていくのを突っ切って。
ここからがウドが沢の始まりという感じであるが、何故か左岸に明瞭な踏み跡が続く。
しかし少し進むと右下の谷底から水流が始まっており、水を汲みたい僕らは急斜面を下っていった。
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1140mのちょうど右から沢形が合わさるところで右からの沢形で湧水ゲット。
しかしこの湧水汲みにくい。
水のないきたっちさんはしっかり汲んだが水残っている僕は面倒になって汲まなかった。
一息ついて沢を下り始めるとすぐ先できたっちさんが最高の水場あった!という。
左岸から合わさる沢形、すぐ上で豊富に水が湧き出していた。まあまたくることはないと思うが覚えておくか。
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ウドが沢を下っていくと次々に枝沢が合わさり徐々に水量が増してくる。これなら湧水何処でもくめるなあと思ったり。
ゴム底の沢靴で歩き通しているきたっちさんは水が増えても問題ないが登山靴に履き替えている僕は水に入れない。沢靴に履き替えるのも面倒。
谷間が水流と比して広かったので幸い登山靴のままでもぬれずに下っていけた。
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16:16、1040mまで降りてきた。
もはや原形をとどめておらず下調べしていないとわからないのだが、ここで三島街道が右から左へと横切っていたはずだ。ここからさらに沢を下ると面倒そうなので踏み跡に上がりたい。
先行するきたっちさんを呼び止めて左岸上へと登ってみると、そこにはちゃんと道型が残っていた。
8年位前まで存在したという三島街道を復元する会の活動のおかげだろう。
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三島街道は左岸を大きくトラバースしていく。きたっちさんが三島街道は標高を全然下げないという言葉はその通りで。
沢が横切るまでの道の状態は思いのほかよかった。
地形図でも顕著な沢が横切る地点では適当にまっすぐ枯沢を突っ切る。
折り返して大分進んだところで道幅がかなり狭くなっていたがここを覗けば歩きやすかった。
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再び道幅が広くなり、北側にぐるりと回り込んでいくあたりで木橋登場。
これは怖い。腐り落ちてるとこもあるし。二人してびびりつつ斜面の際を歩いた。
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その先でショートカットして実線林道に下りようと、北側斜面を覗く。
きたっちさんが踏み跡発見し北西へと斜めに下りて行った。
沢に突き当たる辺りで北へと降りて今度は北東へ方向転換。
急斜面の踏み跡のようなものを辿り、林道へとたどり着いた。
きたっちさん、沢で涼をとる。16:46。
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後は実線林道をだらだらと歩くだけ。
途中ショートカットを図ったら斜面の段差が微妙に高くて良くはなかった。
17:21、きたっち号駐車地着。shige-ponさんのものと思われる車はなかった。
横川パーキングに戻り解散。結構疲れたので途中路肩で仮眠してから帰った。
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今回の軌跡
この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
無題
紅藤沢は途中まで地味オブ地味な沢であるが
1310m二俣を境に一変する。ロープを出してもらったのは一か所だけだがそこまでも多少は沢齧ってないと多少の高度感があるヌメリ小滝で積むかもしれない。沢屋さんにとっては準備運動だろうが。結局のところ最後はきっつい藪漕ぎになるし上に出てからも藪漕ぎ少なくするのであれば日留賀岳から登山道で下山する必要があるため車二台必須。まあ沢屋さんがわざわざ行かない沢であるのは当然だろう。大滝もないし。
日留賀岳西尾根は下りであれば藪慣れしている人間であればそこまで苦労しない。灌木オールスターズとは数分のお付き合いで後は概ね踏み跡を拾える顔より低いネマガリゾーンだからだ。Yoshiさんが歩かれた14年前より何故か踏み跡が拾いやすくなっているのは確かだろう。
なお下山してから知ったがなんとこの日僕らとは逆に午前中に日留賀岳西尾根を登って日留賀岳へ行った人間が存在した。shige-ponさんである。車は見たけどまさか日留賀岳西尾根だったとは。
shige-ponさんは僕らが下りで1時間50分かけた稜線から1471.9m三角点の区間をネマガリ藪の登りにもかかわらず2時間くらいで突破していた。shige-ponさんのコースタイムは常人の1.5倍速以上と考えておいた方がいい。ともあれ年に一人も歩いていなさそうな藪尾根なのに同日三人も歩いていたというのは笑える話である。