みー猫さんと山に出かけた翌週、11月頭のこと。
半月ほど前にもらった会社の健康診断結果で心電図と血糖値が引っ掛かったため、念のため再検査してもらうかと軽い気持ちで近くの総合病院へ向かった。
会社の人からの評判は悪いが、紹介状なしでも見てもらえるし、4年前に鼠経ヘルニアになった時も初診で正しい判断をしてもらえたので僕はある程度信用している。

内科に案内され、とりあえず先生に事情を話すと、血糖値は上限ぎり超えた程度なのもあるが、9月に測定したばかりなので3か月ほど空いてからのほうが良いといわれて今回はパス。
今日は心電図に加えてエコーとレントゲンを測定して、結果は来週ねと言われた。

指示通りに三つの検査を終えて、さて帰るかと思ったら先生に呼び出された。
なにやら雲行きが怪しくなったな。結果は来週じゃなかったのか?と思いつつ再度診察に向かう。
すると先生が
「心臓の左、駆出率20%しかないよ」
「健康な人は50-60%。1/3しか動いていなくてかなりまずい」
そんなばかなと思った。
数日前に10時間登山してきたばかりだ。
そんな状態できつい運動普通にしてきた僕はなんなのかと思った。
とりあえず循環器科の先生に診てもらったほうがいいからと、金曜の予約を取ってその日は帰った。
相変わらず仕事は忙しいのだが、さすがにこればかりはほっとおいたらまずいと思い急いで年休を申請した。

金曜日、循環器科の先生に診てもらう前に血液検査があった。
NT-proBNPとやらの値が400をこえると心不全の可能性、900を超えると可能性が高いとのことだが、僕の検査結果は余裕で1000を超えていた。
循環器科の先生に先週も10時間登山してたんですが、というとこいつ正気か?という反応で医者として登山は禁止と言わざるを得ないと断言される。

まあ今更隠すことでもないので書いてしまうと、僕は古河市民なのだが、循環器科の先生曰く古河市には心臓専門の病院がないらしい。
紹介状書くけどつくば方面か自治医科大かどちらがいい?と言われてなんとなく大学病院は実験台にされそうというとんでもない偏見のあった僕はつくば方面でお願いしますと頼んだ。

紹介状を手に入れた僕は早速月曜につくばの病院へ行くことにした。
ここまできたら仕事の進捗がどうこう言っている場合ではないし上司の許可ももらった。
つくばの病院で改めて心電図・エコー・レントゲンと血液検査を実施。
今度はBNPの値が220超え。NT-proBNPとは閾値が異なりBNPは200以上だとハン不全の可能性が高いらしい。やはりアウト。
先生に心臓のエコー動画を見せてもらう。
健康な人の心臓と比較して見せてもらったが素人が見てもわかるくらい、びっくりするレベルで僕の心臓は動いていなかった。
先生曰く、直ちに入院して精密検査と投薬治療を始めたほうがいいらしい。
ほっといたら死にますか?と試しに聞いてみたら死にます、と言われた。
思っていた以上に僕の体は限界のようだ。

精密検査について詳しく聞いてみると、MRI、CT、ガリウムシンチ、カテーテル検査(生体検査含む)等があるが、カテーテル検査については短期入院して行わざるを得ない、他は外来でもできるけど投薬治療を始めた後に異変があると危ないから7-10日入院して精密検査と治療を同時に行ったほうが良いとのこと。
流石に入院となると会社との調整も必要なため、入院前提で日程調整しますと話し、入院用の書類をもらって帰った。
その足で会社へ行き上司に相談。今週中に不在時の引継ぎをして土曜から入院するということで話がまとまり病院に電話。幸い部屋が空いているとのことで土曜から入院が決まった。

コロナの影響で入院患者への家族の面会は禁止。そのせいもあり、母親が翌日アパートに急にきたりもしたが無事不在中時の仕事の引継ぎをして土曜、11/12はつくばの病院へ。
車で行く際もそれなりに時間がかかったが電車とバスで行くと2時間以上かかり無駄に遠い。一度南にいかないといけないせいだ。同じ茨城なのに。

病院について入院の手続き。
ちょうど昼の時間で、食事をしてからこればよかったと後悔したが病院食が出てきて助かった。減塩食。高血圧気味だかららしい。
血液検査とレントゲンを実施。そして簡易心電図装着し24時間測定される。
夜から強心剤の点滴が始まった。どうやら僕は肺に水が溜まっているらしく強心剤で心臓を働かせたうえで利尿剤等と合わせて水を抜く必要があるとのこと。
日曜は休みなので検査なしと言われて、だったら月曜から入院すればよかったかと思ったが、点滴のことを考えると早く入院してのは正解だった。
どうも入院直前から夜横になると息苦しかったのだ。帯状疱疹後神経痛の痛みもありどちらにしろろくに寝れていなかったのだが。
そのことも話すと帯状疱疹神経痛用の薬も処方された。

何もない日曜を過ごし、月曜はガリウムシンチの薬剤注射。
注射してから二日後に検査するらしい。そして血液検査。血液検査は二日に一度のペースで実施された。注射には随分慣れた。点滴と四六時中一緒に過ごしていたし。
火曜日はCTと造影MRIを行って、水曜にガリウムシンチの検査実施。
そして木曜に心臓カテーテル検査。これが嫌だった。なにせ心臓に管が入るのである。
手首からだけかと思っていたら首からも入れるらしい。
とはいえあきらめて検査を受けざるを得なかった。
部分麻酔はあるのだがやはり手首の動脈に何かが入っていく感覚は気持ちが悪い。
首からのカテーテルも痛くはないが違和感がすごかった。
造影剤を心臓に入れられた時は事前に言われた通り体が熱くなり、正直一瞬漏らしたかと思った。そんなことはなかったのだが。
まあ事故もなく終わったのはいいが、終わったところで先生から衝撃の一言が
「昨日のCTで偶然、胃の外側に5.5cmのイボが見つかりました。GISTでしょう」
GISTとは何か。
部屋に帰ってから左手は点滴、右手はカテーテル抜いた後で手首固定と不自由な中スマホで調べてみると、どうもレアながんの仲間みたいなやつでがんよりは転移しにくいらしい。とはいえサイズがでかいしかなり不安になった。

金曜日、そのGISTと思われるイボについて詳細に調べてみましょうということで、予定になかった造影CT検査が入る。
心臓の治療については順調に水が抜けてBNTの値も80くらいまで改善されたため強心剤の点滴が減薬開始。余計なものが見つからなければなあと思うが、このまま気づかなかったら手遅れの可能性もあったため不幸中の幸いなのかもしれない。

またもや血液検査以外特にない土日。リハビリの先生に言われたかかとあげなどをして過ごして月曜日に造影CTの結果を聞く。どうも胃ではなく隣接する副腎由来の腫瘍らしい。その箇所以外にがんのようなものは見つからず。副腎腫瘍ががんである可能性は100万人に2人らしいので違うことを祈る。
胃のイボの場合内視鏡検査を予定していたのだが、副腎由来だと下手に刺激すると血圧急上昇等まずいことになるらしく中止になった。
ついでに強心薬の点滴も終了し久々に左腕がフリーになった。

副腎の腫瘍はともかく、心臓の入院治療は順調に進み、水曜のレントゲンで肺の水がすっかり抜けたことが確認できたため木曜日に退院が決まった。
色々検査をしたのだが心筋梗塞・狭心症・肉芽腫・サルコイドーシス・アミロイドーシス・膠原病といった心不全の原因疾患は特定されず。ついでにHIVも陰性だった。
結局僕のうっ血性心不全は「特発性拡張型心筋症」もしくは「完全左脚ブロック」らしい。ひとまず特発性拡張型心筋症として心臓を休ませる薬等を服用し心臓の回復を待つが、息切れがひどいなど改善されない場合はペースメーカーを入れる必要が出てくるとのこと。
心臓の手術だけは回避したいところだ。
しばらくは投薬治療と一日30分程度のウォーキングで適度な負荷をかけるように言われている。仕事は無酸素運動をしなければ復帰していいらしい。ようは心臓に過負荷をかけるなということ。ついでに減塩生活も求められた。肺から水は抜けたしBNPの値も改善したが、駆出率が回復したわけではないのだ。
副腎腫瘍のほうはさらなる精密検査を実施予定だが、本当がんだけは勘弁してほしい。


そんなわけで長くなったが、僕は山に登れる体ではなくなった。
副腎腫瘍が良性かつ、心臓の治療がうまくいけば話は別だが、半年以上先になるだろう。下手に無理したら本当に死ぬ。
回復するまでは気が向いた時にまとめ忘れた過去の登山記録を公開していくだけの形になるだろう。
ナゲ達に別れを告げていないのが心残りだ。
酒もたばこもやらないし40歳前なのにどうしてこんなことに・・・と思うが起きてしまったものは仕方がない。
とりあえず今日退院したその足でスーパーに向かい醤油は減塩に変えた。
血圧計も買うつもりだ。
入院中に体重が6kg減ったので、血圧・体重維持を楽しみにしばらく生きていこうと思う。