2024.5.3(金・祝) 同行者:みー猫さん、きたっちさん
板谷峠 -鉢森山 -918m地点 -990m級無名峰 -1037m地点 -合沢源流下降 -テン泊

手術後初のテン泊遠征。
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GW後半の3,4日はどこも天気が良いようであった。
こうなるとどこかにリハビリゆるテン泊へ出かけたくなる。
とはいえ登山道で山小屋キャンプ場は激込みでげんなりすること請け合い。誰にも会わない山中、それも沢で焚火が出きれば最高なのだが・・・。
そこで心臓・癌にやられる前に作っていたネタ帳を紐解くと、山形・福島県境辺りの中央分水嶺、栗子山の南部が浮かび上がる。
板谷峠から栗子山の間の中央分水嶺は栗子山と杭甲山の間と鉢森山を除き、無雪期の記録は沢登時に稜線をちょっと通過した程度しかなく様子はほとんどわからない。
ただまあ破線路もないし中央分水嶺歩きの好事家も残雪期に歩いていることから結構な藪なことは間違いない。面倒そうである。
しかし山に行けない間の僕は暇だったので、この区間についてグーグルアースも利用して弱点を調べ綿密な計画を練り上げていた。
きっかけはヤマレコの沢登り記録だ。稜線に作業道がとおっていたと書いてあるのだ。グーグルアースで確認すると果たして7割ほどの区間に作業道らしきものが通じているのがわかる。これは大きい。これがなければ二泊三日のガチ藪行になるところが一泊二日のゆる歩きに化けた。中間くらいに源頭の傾斜が緩い沢があり沢泊もできそうなのが高ポイント。歩けるようになったらいつか・・・と考えていた。
余談であるがこの作業道曰くつきである。作業道が作られたのはおそらく栗子山周辺に風力発電の計画があるためだ。僕がこの計画を知ったのは2年前、手術前最後の遠征で猪苗代湖東の中央分水嶺を歩いた時、道がないはずのところが刈り払われており、風力発電なんたらかんたらと書かれた標識があった。その後グーグルアースで中央分水嶺を観察したりする中で栗子山周辺の風力発電計画も知ったのであるが、このこの風力発電計画、環境調査不足であった。天然記念物のイヌワシが近くに巣を作っているのに距離が離れているからセーフとの調査結果を提出。そこをイヌワシ研究会から猛反発され計画中止の嘆願書が出されたのだ。それもごく最近。
ナゲが生えているわけでもないし僕しては建設されようがされまいがどちらでもいいのだが、建設中止となれば作業道も交配して藪に還る。無雪期に行くなら今である。
GW後半の予定は白紙というみー猫さん、たまには遠征もときたっちさんを誘い三人で乗り込むことした。

5/2、最近22-23時に退社が多いのだが今日ばかりは18時に帰りますと宣言し、19時過ぎに会社を出た。ロスタイムである。
パッキングして22時に家を出た。GW後半前夜の為少し車が多かったが順調に新4号と高速を使い福島大笹生ICまで到着。コンビニで一息ついてから13号で米沢市へ。萬世大路記念碑公園駐車場へ5/3、1時過ぎについた。後部座席を倒して車中泊。冬用シェラフでは少し暖かすぎるなと中に入らず掛け布団代わりにして寝た。

5/3、集合時間は6時なのだがそれよりも早くきたっちさんとみー猫さんも到着。
僕とみー猫さんの車を広い駐車場の端に停めて、きたっちさんの車で板谷峠へ。ゲート前に一台分は停められる。板谷峠から米沢市方面へ抜ける道は冬季通行止めだ。6:19、準備をして歩き出す。ゲートは横から通過。
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まずは舗装路で100mほど標高を上げる。正確に言えばすぐ西の尾根が中央分水嶺なのだが風車がぽこぽこたっており情緒もないので気にしない。まだこの辺りはイヌワシが生息していないようだ。
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20分足らずで標高825mくらいの峠に到着。
振り向けば吾妻連峰。いずれかは向こうの分水嶺も歩かないと。
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ここから藪入り。
国有林・境界標の標柱がありどうぞお入りくださいと言った感じで。
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それではお言葉に甘えて・・・と僕先頭で入っていく。
踏み跡があり森の小道歩きで楽勝と思ったら踏み跡は消えて結局ガサる。
しかしすぐに作業道跡みたいな感じになりあっさり藪を抜けると風車横の舗装路に飛び出た。
標高850mくらい。
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この舗装路を歩いていけば楽できる気もするがどこへ行くかはわからないしと舗装路左のヘリを登り歩いていく。
舗装路が右にカーブしているところで道沿いから離れて北へ直進。前方にも風車が見えるのでいずれ道と合流するのだろうが一応中央分水嶺歩きだし。
ごちゃついてつる植物も混ざる藪が面倒で針葉樹林に逃げ込むが、ここはトゲ植物が混ざり枝打ちもされていないのでこれまた面倒。タラノメもあちこちに生えていたが育ちすぎており食用に適さず。
840mゾーンの南端から少し進んだくらいで作業道跡に出会いそれをたどると840mゾーン中間でポンと風車横の砂利道に飛び出した。基準点あり。
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最初の目的地、鉢森山はアンテナのたつあのピークだ。
砂利道は右にカーブして折り返していくので、僕らは真っすぐ杉林に突っ込んだ。
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管理されていない針葉樹林だがつる植物があまりなくてさっきよりは歩きやすい。
鞍部から登り返しに入り気持ち右寄りに登っていく。事前調査で鉢森山の南東尾根に作業道在りなのは分かっているのだ。
やがて植生が変わり雪国名物逆茂木達がお出迎え。
しかしわりと隙間があって順調に登れる。藪漕ぎをしているとテン泊の重荷も気にならない。早めについて寝ていたので今日は心臓も大人しい。
ムラサキヤシオなんかを眺めつつ歩いていくと7:34、925mくらいで南東尾根の作業道にポンと飛び出した。第一藪区間は無事突破である。
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藪抜けすると歩きがはかどる。
吾妻連峰を背にせっせと標高を上げていく。この辺りはイヌワシがいないのか風力発電計画が先行しているようで風車があちこちに散見される。ジーっという音がうるさくて野生動物は逃げだしそうだ。
オオカメノキは満開で、花見にはちょうどいい時期に来たようだ。7:47、鉢盛山山頂のアンテナ施設に到着した。
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鉢盛山の山頂は少し西に藪入りした先のようだ。ちょっと探るが思ったより奥なので一度荷物を下ろして空身で向かう。
灌木の隙間を縫うように歩いていくと少し小高い場所は灌木もなく開けており、足元に三角点があった。ここが山頂のようだ。
南に吾妻連峰、西に飯豊連峰、北西に朝日連峰、月山と素晴らしい展望である。一般ハイカーはここで満足して帰るだろうなと思った。僕らの旅はここからなのだが。
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これから歩いていく中央分水嶺。
標高は高くて1200m程度なので雪はない。いや、通常であれば雪が残っていてもおかしくない時期なのだが今年は積雪が少ない+この陽気なので溶けてしまったようなのだ。それを狙ってやってきている。
ピラミダルな山容が杭甲山(1202mピーク)。あそこの前後は藪漕ぎが避けられない。
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ゆっくり休んで8:09、先へ進む。
ここから中央分水嶺は方角を変えて北西へ。
平坦な笹薮に入るとつる植物がうざい。
笹薮ゾーンを抜けると急斜面に逆茂木が生える。
下りなので大して邪魔にならないが、急な斜面はつるりと滑る。
溝っぽいところを滑るように降りていくと、930m鞍部付近南サイドは何故か藪が薄かった。新緑が眩しい。
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前方に建物のようなものが見えたのでなんだなんだと近づいてみると廃リフト。
地形図を見るとスキー場跡地のようだ。2016年まで稼働していたようなのだが数年でここまで荒れ果てるのか。
少し北の広場的なところに移動すると先が見渡せる。
しばらくは事前の調査通り作業道が続いているようで一安心。
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かつてのスキー場の案内板は朽ちており、棒が一本のみで標識は下に落ちていたのだがきたっちさんが復元にかかる。
これは帰ってから分かったことだが、風力発電の作業道を通り、翌日ここにこられた方がヤマレコに記録を上げていた。
きたっちさんの復活させた案内板、誰にも見られることはなく再び風で落ちて朽ちていくと思われたが、なんと日の目を浴びていたのである。
グランプリコースでいきますか。でもそっち方角違いますよと僕らはゲレンデを離れて東北東に藪を下った。8:39。
逆茂木の藪はつるにさえ当たらなければ順調に下れるのであった。
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8分ほどで作業道に飛び出る。
右を見たら道は上から続いていて、これはグランプリコースが正解だったかとなるがまあよし。
918mアンテナピークに向けて道を歩いていく。
道があると楽だけど荷物が重く感じる。
アンテナピークの施設は栗子無線中継所。道はこの施設とは関係ないようで、ケーブルは横を素通りして先へと続いていた。風力発電関係のケーブルだからだろう。
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ケーブルの這う作業道はこの先鞍部から登り返して、930m級ピークまでは続いているように見える。
そのさき、990m級ピークが今回の核心と見込んでいた場所だ。
このピーク積雪期に歩いてた記録を見るに南尾根が岩場で西から回り込んで谷間の樹林帯を登る必要がある。ここが無雪期にどうなっているのかがポイントである。
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展望もいいけどこれ立派な自然破壊だよな。イヌワシ以外にも気にするべきイキモノいるんじゃないのと思いつつお気楽に歩いていく。
930m級ピークの設備手前で広い道は途絶えたが、左に小道があった。
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9:18、930m級ピークの設備までやってきた。
どうもこれ風の状況を調べる「風況ポール」らしい。栗子山ではこのポールを3本建てる計画が進められていると2023.11の記事にあった。この後残り2本も見たので間違いないだろう。
この先きつい藪漕ぎが予想されるため、僕らはザックを下ろして休憩した。
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落ちていてはいけないパーツ。
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9:36、みー猫さん先頭で藪入り。
この先の990m級ピーク先まで予断を許さない。昼前に1037m級ピークまで抜けられれば余裕なのだが・・・。
しかしこの後意外な展開が僕らを待ち受けていたのである。
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続く