2024.10.12(土) 同行者:みー猫さん、きたっちさん
ウツルギ沢を渡る橋手前の路肩 -安ヶ森キャンプ場 -林道終点 -白滝沢 -白滝沢二俣 -白滝沢中間尾根 -水場への地獄のトラバース -白滝沢左俣源頭の水場 -県境尾根 -1692m地点 -枯木山南の肩 -枯木山 -枯木山南の肩 -1660m級ピーク南西鞍部
-テン場 →二日目に続く

栃木藪漕ぎの集大成。
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栃木県境を藪漕ぎで一周しようと思い始めたのは、もう8年も前のことだ。栃木の藪漕ぎを始めたころは足尾・日光を中心にしていたが、2016年に初めて裏那須の藪を漕いだ時、ネマガリに灌木のジャングル、ハイマツやナゲの空中戦に散々苦しめられるとともに、この藪が漕げたのなら栃木県境を残雪期に頼らず無雪期に藪漕ぎで一周できるのではないかと思った。
その後年1で裏那須の県境へ日帰りで出かけ、2020年に大峠から大川峠までの区間を繋げ終わった時、栃木福島県境、そして栃木の県境は藪漕ぎで一周できると確信した。
仕事忙しくて記録のアップロードもできなかったが、栃木茨城の県境もほぼ歩き終わり、栃木群馬の県境も終わりが見えていた2022年、栃木福島県境で最も厳しい中央分水嶺区間、尾瀬から那須の間もついに白滝沢源頭近くの1692m地点付近から田代山峠の間を残すのみとなった。この区間はどう頑張っても一泊二日かかりテン場、水場もろくになく情報にも乏しい。情報がないのであればこの目で見に行くしかない。枯木山ピストンもしたいし普段は下見なんかしない僕もここだけは下見に出かけることにした。
2022年10月、みー猫さん・きたっちさんとともに福島側の赤岩沢を遡行し県境へ出た。その時得られた情報は赤岩沢右俣は早い段階で枯れてしまい、県境尾根まで登りで1時間かかるため利用しずらつい事。そしてテン場にはちょうどいい場所が県境尾根にあることだった。
下見1
下見でテン場は見つけたものの、水場のアテが外れた僕であったが、別の水場候補は見つけていた。
2022年9月、きたっちさんと白滝沢左俣を遡行し、1692m地点東の肩辺りで県境へ出て1549mへと東進して南尾根を下った。
この時白滝沢左俣の源頭水場が1510-1520m付近にあること、そしてそのすぐ下に沢装備がないと登れない滝があることを知った。白滝沢中間尾根からトラバースしていけそうな水場ではあるが、白滝沢左俣の情報はネットで沢屋さんが遡行した記録は見つかるもののヤマレコ等では見つからずGPSの軌跡から正確な位置は自分で歩かないとわからなかった。面白みを求めて県境歩きのついでに遡行した沢であったがこれは収穫であった。
下見2
一般的に(といってもワンゲルを除いてほぼ歩く人間はいないのだが)田代山峠から枯木山・1692m地点へと無雪期に歩く場合は1692m地点から南尾根が使われている。おそらくそちらからもこの水場はトラバースして行けるだろうし傾斜的にも楽だと思われる。
それでも僕達は白滝沢中間尾根から行くことにこだわった。何故ならばみー猫さんは既に1692m南尾根利用で無雪期に枯れ木山へ行っているし、きたっちさんも残雪期に歩いていたからである。
僕的にもネットでは烏ヶ森の住人さんの記録ぐらいしか見つからないこの尾根を歩いてみたかったのである。(烏ヶ森の住人さんの記録では白滝沢中尾根と記載)

そんなわけで2022年10月には事前準備も整い後は歩くだけとなったのだが、2022年11月、僕は心筋症と癌によって藪漕ぎどころか山に行けない体になってしまった。この時は栃木一周は夢のまた夢かと一時は諦めたのだが、その後手術は成功し、全盛期ほどではないものの心臓も回復傾向にありそれなりに山へも行けるようになってきた。
しかしいつ再発するかわからない癌であるし、腰にも別の腫瘍がある。山は逃げないが僕はいつ山へ行けなくなるかわからない。早めに行けるうちに行ってしまいたい。
今年に入ってからずっと機をうかがっていたのだが7月以降週末の天気が二日間いい日がずっとこなかった。9月に入り沢遡行して一部の県境を日帰り分割歩きを先にしてしまおうともしたのだがそれさえもできないくらい天気に恵まれなかった。
そんな中ようやく10月の三連休、二日連続で雨が降らない予報となった。行くしかない。土曜の午後は少しぱらつくようだがここまできたらそんなものに構ってはいられない。合羽でしのいで結構でと連絡するとみー猫さん・きたっちさんからOKが出た。2年越しに帝釈山脈の核心部に挑む時がきた。

2024.10.12、いつものように仕事が忙しく会社を離脱できたのは22時半過ぎだった。急いで外食し身支度整えて家を出るころには日付が変わっていた。
湯西川水の郷で2時間程度仮眠していると集合時間の5時。
きたっちさん、みー猫さんも横に来ていた。
予報では午前は晴れのはずだがガスガス。でもまあ大丈夫でしょうと三河沢ダム入り口近くに移動。僕のレガシィをデポして安ヶ森キャンプ場方面へ。
流石に一晩キャンプ場の駐車場に停めるわけにはいかないので少し手前の路肩に駐車。
6:07、歩き出す。肌寒いので合羽を羽織る。この後沢ジャブがあるので僕はスニーカー。
6:13、安ヶ森キャンプ場に到着。車は停まっていない。営業時期終わっているのでは?と話になるが翌日車を展開させに来たら客がいたので営業していたらしい。
白滝沢への林道を歩いていく。
この林道、歩くのは四回目である。
みー猫さん、きたっちさんと熊取沢という遡行記録がない地味沢を遡行して1549m地点へ行ったり(二俣以降で沢装備をフルに使ったので初心者では遡行できない)、きたっちさんとヌーグラ沢中間尾根を登ったり、白滝沢左俣を遡行したためである。
終点まで重荷に耐えつつ歩いていく。今回の荷物は特別重かった。いつもは自立式ツェルトの僕であるが、寒さと結露、笹の上に幕栄することを考慮して、思いがテントを背負ってきた。寝袋も冬用シェラフにシェラフカバーも持った。ダウンに上下の重ね着と着替え、水3Lに予備含めて三日分の食料。沢ジャブ用の靴まで持っているので60Lザックはパンパンであった。
6:56、林道終点から白滝沢へと降りる。
靴下を脱いで素足にスニーカー。みー猫さんも代えの靴。きたっちさんはハイパーVソールの水量用靴でそのままいくらしい。なるべく水を避けて。
7:07、白滝沢を歩き出す。
ピンクテープが右に左にとあって渡渉不可避。僕とみー猫さんはジャブっていくがきたっちさんは靴下までぬれない程度に行ったらしい。
重いザックの上蓋が寄れている僕。
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二俣までは大したことのない沢であるが、岩がとにかくぬめる。ただのスニーカーではわりと危険である。慎重に進む。
7:36、970m手前の二俣に到着。左俣の奥には白滝と呼ばれる大滝。三段20m滝らしい。
僕ときたっちさんは2回目だし、なんならきたっちさんは前回滝の奥を潜っていたりもしたので今回感動は小さい。
烏ヶ森の住人さんの記録では、尾根末端は急峻なため20分ほど右俣を進んで取り付いたらしい。僕らもそうするかとみー猫さんと僕が右俣を進み始めるが、きたっちさんは岩の基部を巻くようにして既に尾根へと取り付いていた。
どうやら行けるらしい。
それならいきますかと尾根末端近くで僕とみー猫さんは登山靴に換装した。
えらく急だけどこの斜面登れるんですかねぇと思いつつ7:52、急斜面にとりついた。
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一段登って、この急斜面、上に出たところであの岩壁超えられるのか?と思っていると左からきたっちさんの声が。
岩場の基部に沿うようにトラバースすると細尾根上に乗れた。
幅も狭いが傾斜も急で段差ばかり。木の根、幹、岩をつかんでよじ登る。重荷ではバランスがとりづらい。左右どちらも落ちたらおしまいなので緊張する。
写真では怖さがわかりにくい最狭部。大した事なさそうだが両サイドやばい。
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その先で急斜面トラバースしつつ倒木を潜らされるという苦行や重荷で段差をファイト一発で登らされたりする。
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あと一歩で登れるけどつかむものないかな・・・。
おっ、ちょうどいいところにロープが。
"ロープじゃねえぞ"
ナゲであった。
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危険な岩場に生えてるくせして大抵役に立たないナゲ達であったが今回はワンポイントで役立った。
取り付いてから15分足らず、標高50m上げたか上げないかくらいのこの区間が危険度的にこの尾根の核心であった。

にょろにょろとアズナゲはびこる尾根を歩いていく。傾斜はまだきつめだが危険度は低い。
投げの隙間を縫って少し登ると左にスペースがあり、一息入れてみー猫さんを待つ。
尾根左側が登れる傾斜になって藪も薄いのでそちらからナゲ達を回避したり。
少し息を切らして後続になる僕。藪の薄い左斜面から攻めるきたっちさん。尾根センターでナゲと触れ合いに行くみー猫さん。1060mくらい。
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広葉樹林にたまに針葉樹が混ざり、背の低いナゲ達の灌木が足元に巣食う尾根。
藪密度はそこまでではなく隙間があるので大した障害ではないが、少し傾斜がきついためのそのそと登って1100mくらいに8:34。
久々にちょっとした平坦地で一息。
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その先で尾根上にシャクナゲートが現れたので、尾根左サイドをトラバースしてから斜面を登ってナゲ達の隙間をつく。
1150mくらいにテント一張可能な平坦地を見つけるが、ここで張るやつはいないだろう。
どうぞお通り下さいとナゲの細道も現れたり。ここまで間を通れるか横から避けられるかで、藪では大して苦労していない。
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その先から時折針葉樹の大木を見るようになる。奥まっているし末端ががけみたいな物だから、この尾根には植林の魔の手が及んでいないのだろう。
ナゲ達も好き勝手に暮らしているのだ。傾斜も多少緩くなり平和な歩きが続く。
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烏ヶ森さんの記録にもあるが、1250m手前辺りから笹薮が混ざり始める。
一ヶ所右から巻いたが掴むものが微妙でサラサラとした土斜面を横断したためここは尾根上を歩いた方が良かったかもしれない。
1300m辺りの様子。
ネマガリではないし笹も灌木もなんとなく隙間はあるのでそれなりのペースで進める。
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9:52、1330m辺りの藪の隙間で一休み。
展望はろくにない尾根だがなんとなく、北の県境尾根が見える。
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10:12、歩きを再開。
相変わらずどうしようもない藪ではなくそれなりのペースで進む。腰から胸だかの藪にはなってきたが獣道的なのもある感じでそこまで苦労しない。
足元でイワウチワの狂い咲き。
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大木に絡みつき、縄張りを主張するナゲ達。
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またも現れた巨木の隙間をのぞき込むきたっちさん。
大木の周りが藪薄いので助かる。
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ついに密藪かと思きや薄くなったりして、藪よりも重荷に苦しんだ白滝沢中間尾根。
1530m付近にやってきたのが11:13。
ここから少し下り気味にトラバースしていけば水場にたどり着けるはずである。
藪も濃くなり始めているのでちょうどいいタイミングなのだが僕ときたっちさんは知っている。水場離脱後の沢の詰めがネマガリ地獄であることを。
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ともあれ、まずは水場にたどり着かないことには始まらない。
この先、逆茂木と笹薮の急斜面トラバースに苦しめられることを、僕たちはまだ知らなかった。
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続く